二人の元へ 1
「……うぅ……眠れないな……」
俺は一人で小さくそう呟いた。
目をうっすらと開けて見ると、宮本さんは既に気持ちよさそうに眠っている。
俺はちらりと車に備え付けてあるカーナビの画面を見る。
……3時。深夜だ。
俺はなるべく宮本さんを起こさないように、その柔らかい太ももからゆっくりと頭を話した。
そして、身体を起こす。助手席から見ると、宮本さんは完全に眠ってしまっているようだった。
その腰元には先ほど俺に向けて発射された拳銃がある。
「……護身のために持って行きたいけど……無理だな」
俺は諦めてそのまま車を出ることにした。なんとか宮本さんを起こさないようにしながら、そのまま車のドアを開く。
ゆっくりと開いたドアから俺は外に出た。
シーンと静まり返った深夜の街。正直、ここがどこだか正確にはわからなかった。
とりあえず、歩いて地図を探そう。そして、それから最寄りの駅まで行く。
駅まで行けば線路伝いに歩いて俺の家の近くの駅まで行けばいい。
無論、最大の問題はゾンビだ。線路付近にはゾンビはあまりいないはずだ。しかし、駅まで仮に辿り着いたとしてもそこから家までゾンビはいるだろう。
俺は前に小室さんを載せて自転車を漕いだことを思い出した。
そうだ。自転車ならばゾンビに捕まる可能性は低くなる。自転車を入手しよう。
といっても、どこかで自転車を拝借できればいいが、そう簡単に鍵のかかっていない自転車なんてあるのだろうか……
「……どこかの家で鍵のかかっていない自転車を盗むしか無いのかなぁ……」
そもそも、食料だってドロボウ同然にして奪ってきたのだ。今更いい子ちゃんを気取るつもりは毛頭ない。
だとすれば、自転車を探す。それが第一の目標だ。
俺はそう考え、歩き出すことにした。
「……どこに、行くんだ?」
しかし、そんな俺の背後から、地獄のそこから響いてくるような声が聞こえてきた。




