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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター12
76/204

デパートでお買い物 5

「宮本さん! 聞こえてますか?」


「え……あ、ああ。赤井君……た、助かったのか?」


「ええ。小室さんのおかげです」


 俺がそういって小室さんを見る。しかし、小室さんは無表情で……というか、どことなく機嫌悪そうにしながら俺を見ていた。


「そ、そうか……よかったぁ……」


 と、急に安心してしまったのか、宮本さんは涙を流している。


「あ……と、とにかく! ゾンビがいるってわかった以上、食糧を持ってさっさと家に帰りましょう!」


 俺がそういうとよろめきながらも宮本さんは立ち上がった。


「えっと……古谷さん、悪いんだけれど、食糧の入ったカートを頼めるかな?」


「え? どうしてです?」


 俺はそう言ってから、小室さんに近づいていき、その冷たい手を握った。


「俺は小室さんを連れていかなきゃいけないから」


「ああ……わかりました。ほら、婦警さんも私についてきてください」


「だ……ダメだ!」


 と、いきなり宮本さんが大きな声を出した。


「……え? なんですか? いきなり」


 宮本さんがあまりにも大きな声を出すので、俺は思わず驚いてしまった。


 宮本さんはなぜか俺のことをすがるような目つきで見つめてくる。


「た、頼む……こんなところにはもう居たくない……赤井君……私を車までつれていってくれ……」


「え……えぇ……」


 予想外のお願いにさすがに俺も返す言葉がなかった。見ると、小室さんも古谷さんも言葉を失って

いる。


「お願いだ……カートに入っている食料は私が持つ……たから……」


 涙目でそう言う宮本さん。俺は困ったように小室さんと古谷さんを見た。


「……まぁ、しょうがないんじゃないですか」


 呆れ気味にそういう古谷さん。小室さんも小さく頷いていた。


「あ、あはは……わかりました。宮本さん。一緒に行きましょう」


「あ……ありがとう」


 安心したようで、顔を柔らかく笑顔にしながら、宮本さんはそう言った。


「じゃあ、俺と宮本さんは先に車に行っているから。なんか……ごめんね」


 二人にそう言ってはみたが、二人共やはり相当不満そうに俺のことを睨んでいた。そんな眼で見られたって……仕方ないのだが。


「あかい、くん」


 と、そのまま歩き出そうとすると、小室さんの背後から聞こえてきた。


「え……小室さん?」


 小室さんがたしかに俺のことを見ていた。そして、何か言いたそうにしている。


「小室さん、赤井君に何か言いたいこと、あるんですか?」


「あ……ちがう、ない」


 小室さんはそのまま何も言わなくなってしまった。


「赤井君……早く車に行ってくれ」


 辛そうな声でそういう宮本さん。俺は小室さんのことが気になったが、仕方なくそのまま宮本さんを連れて車へと向かった。

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