デパートでお買い物 4
「……え?」
俺は顔を上げた。
見ると、俺の隣には小室さんと古谷さんが立っていた。
「ふ、二人とも……どうして……」
「はぁ……まったく、小室さんをここまで担いでくるのも、大変だったんですよ?」
「え?」
古谷さんは大きくため息をついていた。小室さんはただジッと俺のことを見ている。
「あかいくん、あのひと、たすけたい。わたしたち、きょうりょく、する」
「え……小室さん」
小室さんが淡々としてそう言った。
「ま、私はあの人のこと、気に食わないですけど、赤井君が助けたいなら、私達も仕方なく、助けてあげるってわけですよ」
古谷さんはそういって恥ずかしそうに眼を逸らした。なんだかんだでこんな事を言っくれる二人だからこそ、俺は、彼女たちのことを人間だと思っているのだ。
「ありがとう……二人共」
「御礼はいいですよ。ほら、助けないと、あの人、食べられちゃいますよ?」
「あ、あはは……そ、そうだった。で、でも、とにかく今はピンチになんだ。早く宮本さんを助けないと……小室さん、お願いできる?」
しかし、小室さんは頷かなかった。なぜかチラチラと俺の方を見てくるのだ。
「小室さん、どうしたんです?」
古谷さんも不思議そうにそう訊ねた。
今すぐにでも宮本さんを助けなければいけないのだ。余りグズグズして居てもらっては困る。
「小室さん。早く!」
「……わかった」
小室さんの態度は気にかかったが、それでもなんとか小室さんはゾンビの群れの方に向かって、またひとしきり「あー」とか「うー」とか言った。
その後、ゾンビ達はなぜか急に宮本さんに興味をなくしたかのように、そこの場から離れていってしまった。
ゾンビ達が居なくなった後でしばらく俺達は呆然としていたが、小室さんだけが振り返って俺達を見た。
「おわった」
「え……ああ。ありがとう」
なんとか小室さんのおかげで宮本さんは助かったようである。もっとも、助かった当人はあまりの恐怖にいまだに立てないようだったが。
「宮本さん、大丈夫ですか?」
俺はその場で座り込んだままの婦警に近寄って行った。宮本さんは完全に放心状態であった。




