デパートでお買い物 3
一体何をどうしたら五体のゾンビに囲まれる状況を作れるのか聞きたいところだが……今はそれどころではない。
ゾンビ達は皆従業員の服を着ている。おそらく、一人がゾンビ病を発症してそれが伝染したのだろう。
「宮本さん! え、えっと……とにかく! 下手に動かないでください!」
宮本さんは必死に首を縦に振っている。しかし、ゾンビ達はゆっくり、だが一歩ずつ宮本さんに近づいて言っている。
どうする? どうにかしてゾンビ達の注意を宮本さんから反らさないと……
「お、おい! ゾンビ共! こっちだ!」
俺はありったけの声でゾンビに呼びかけた。しかし、ゾンビ達は反応することもなく宮本さんに向かっていく。
「お、おい! こっちだって!」
全然だめだった。まるで宮本さんしか眼中にないようである。
「あ……ど、どうしよう……」
「あ、赤井君! 助けてくれ!」
すでに半泣き状態で俺にそう叫んでくる宮本さん。正直、俺の中ではこれはもうどうしようもないと思っていた。
別に俺が薄情な人間になったのではなくて、こんな光景はもう何度も見てしまったからだ。ゾンビ観察をしていれば、ゾンビに食べられてしまう瞬間の人間だって何度も見ている。
そう言う人たちは瞬間的に自分にはもうどうすることもできないって俺はわかってしまうようになった。双眼鏡で見つけた時の宮本さんはそうではなかった。
でも、今の宮本さんはそうだ。もう、俺にはどうすることもできない。
「……くそ……ごめん。宮本さん」
俺はうつむきながら小さく謝った。聞こえていたのかいなかったのか、宮本さんは悲しそうな顔で俺を見ていた。
「はぁ、またゾンビに囲まれているんですか……人気があるんですね。あの人」




