怪しい婦警さん 4
「よし。ここだな」
「……へ? も、もう、着いたんですか?」
あまりのことに動揺してしまい、いまだに周囲の状況を理解しきっていない俺に対して、何食わぬ顔で宮本さんはこちらを見てくる。
「ああ。どうした? 赤井君。なんでそんなに汗をかいているんだ?」
そう言われて俺は、額にぐっしょりと汗が吹き出ていることに気づく。
「え? あ、あはは……え、えっと……宮本さん。警察署ではどこにお務めなんですか?」
「何? なんでそんなこと聞くんだ?」
「え、えっと……ちょっと気になって……」
「ああ。私は交通安全課だ。だから、赤井君。信号が青であっても横断歩道を渡るときはちゃんと、左右を見てからでないとダメだぞ」
そういって宮本さんは車から出た。正直、この町の交通安全に酷く不安を覚えたのは此の時が初めてである。
「あ……小室さん、古谷さん、大丈夫ですか?」
後ろを振り返ると、小室さんはいつも通りだった。
しかし、古谷さんは小室さんに抱きついて涙目でフルフルと震えている。
「あ、あの人……なんなんですか! 私達を殺す気ですか!」
半ギレしながら古谷さんは怒っていた。
「まぁまぁ……とにかく、外に出よう」
そう言って俺も車の外に出てみる。すでに時間は車の時計を見て確認したが、深夜の二時を回っている。
「デパート……だな」
宮本さんが目の前にそびえたつ巨大な影を見てそう呟いた。




