終わった日常 7
「え、ちょ、ちょっと待ってよ。俺の話、わかるの?」
思わず俺は慌てて、目の前にいるのがゾンビだということを忘れ、女の子に訊ねる。
「あう? あー……うあ」
女の子ゾンビはゆっくりと、だが確実に頷いてくれた。
「……マジかよ」
俺の口から思わずそんな言葉が零れた。
言葉のわかるゾンビがいるっていうのか……まぁ、会話ができるわけじゃないみたいだが。
「……まぁ、いいや。とりあえず、助かったってことか」
目の前の女の子ゾンビは、肌も白すぎるし、ゾンビ病発症者には間違いないが、どうにも俺を食べようっていう気はないらしい。
俺はひとまず安心して、思わずそのままトイレの中に座りこんでしまった。
「あう。あう」
「え? ああ、はいはい。いいんだよ。ここにいれば」
「あうあー……うあー……」
「あー……よくわかんないけど……俺、もう疲れたから、ちょっと寝るね」
安心したらどっと疲れてきてしまった。
俺は目の前にゾンビがいるというのに、そのまま目を閉じる。
もしかしたら、女の子ゾンビの気が変わって食べられてしまうかもしれない……そんな不安が一瞬だけ脳裏によぎった。
でも、こんなかわいい子に食べられちゃうんだったら、別にいいか……
そんなあり得ないことを考えながら、俺はあろうことか、そのまま眠りに落ちていってしまったのだった。