表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター10
68/204

怪しい婦警さん 1

「え……騙されているって……俺が? しかも、あの宮本さんに?」


「ええ。そうです。騙されていますね」


 リビングに戻って、テーブルを挟んで座って俺と小室さんと古谷さんは向かい合った。


 小室さんの方は相変わらず無表情だったが、古谷さんの方は憮然として俺にそう言ってきた。


「そんな……どうしてそんなことを言うのさ」


 俺がそういうと、むしろなんで俺がそんなことを言っているのかという具合で、小室さんと古谷さんは俺のことを見てきた。


「……はぁ。まったく。赤井君。いいですか? あの人は、人間なんですよ?」


「……え?」


 古谷さんがため息混じりにそう言った。俺は古谷さんの言っていることの意味を理解できなかった。


「人間って……まぁ、そうだね」


「わかってないですね。まぁ……いいたくないですけど、あの人は私達と違って、正真正銘の、人間なんです。わかってますか?」


 古谷さんは俺に向かって少しいい辛そうに、「人間」という点を強調した上でそう言った。


 俺は何も返すことができず、ただ、古谷さんのことを見つめる。自分の言ったことに対し俺が理解していないことを古谷さんはわかってしまったようで、大きくため息をついた。


「……わかりました。もっとちゃんと言うならば、あの人は、赤井君と同じ人間、ってことです」


「……えっと、古谷さん。言っていること、わからないよ。俺にとっては、小室さんも古谷さんも人間だし――」


 俺が続きを言おうとすると、古谷さんがそれを制す。


「……赤井君。私達が今日の朝まで悩んでいたことはなんですか?」


「え……食料の調達問題?」


「そうです! 食料! 赤井君とあの人には食料が必要なんです! そして、あの人はゾンビが嫌い……私の言いたいこと、わかりますか?」


 古谷さんが興奮気味にそうまくしたてても、俺は理解できなかった。


「あのひと、わたしたち、じゃま」


「……え?」


 ふと、小室さんがつぶやくようにそう言ったのに、俺は反応する。


「しょくりょう、と、あんぜん、あのひと、ほしい」


「あ……うん。だけど、宮本さんは、別に小室さんのことを邪魔だなんて……」


 俺がそう言おうとすると、小室さんはその生気のない瞳でジッと俺のことを見た。


 ……ホントに、そうなのか?


 俺は宮本さんの何を知っている? 小室さんと古谷さんはこれまでこの家で一緒に過ぎしてきたから、なんとなく互いのことはわかっている。


 だけど、宮本さんは今日会ったばかりだ。それなのに――


「話し合いは……終わったか?」


 と、宮本さんの声が聞こえてきた。振り返ると、少し申し訳無さそうにしながら俺達のことを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ