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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター9
66/204

ゾンビと人間 4

「あ……小室さん。古谷さん」


 俺が声をかけると、二人は扉を開けて俺の部屋に踏み込んできた。


 小室さんは相変らず無表情だが、古谷さんは明確に不機嫌そうに俺のことを見ているのがわかった。


「何のお話を……していたんですか?」


 古谷さんにそう言われてしまったので、俺は宮本さんの方を見る。宮本さんは困ったような顔をしていたが、コホンとその場をごまかすように小さく咳払いをした。


「あー……しょ、食料の問題の件について話し合っていたんだ」


「はい? 食料?」


 古谷さんは怪訝そうな顔で宮本さんを見る。しかし、言い出してしまった手前引込みがつかなくなったのか、宮本さんは去勢を貼るように先を続ける。


「そ……そうだ。私は、大人だ。しかも警察官。だとすると、市民である君たちを守る義務がある」


 宮本さんの其の言葉を、どうにも小室さんと古谷さんはまったく信じていないようだった。明らかに不審そうな目で宮本さんを見ている。


「へぇ……で、具体的に何を話していたんです?」


「具体的に……そ、そうだな。とにかく、私に任せてくれないか、と言っていたんだ」


 宮本さんはそう言ってちらりと俺のことを見た。どうやら、さすがに適当を言うにも限界がやってきたらしい。


「え……あー、えっと……そう言ってくれるのは嬉しいんですけど……どうするんですか?」


 助け舟になっているのかわからなかったが、俺は宮本さんにそう言った。


「ど……どうするって……そ、そうだ! コンビニまで行ってくれば、いいのだろう?」


「……だから、今から行くんですか? こんな真夜中に?」


 そう言われて宮本さんは空が真っ暗であることに気付いたようである。そして、すぐに自分が考えなしに行ってしまったことを後悔しているようだった。


「……はぁ、やっぱりダメダメですね」


 呆れた調子で古谷さんがそう言った。俺は宮本さんを見る。と、ものすごく恥ずかしそうに顔をあからめていた。


「あ……古谷さん。宮本さんだって、俺達のことを思って言ってくれているんだし……」


「……いいんだ。職場でも、使えない新人だって言われていたし……はぁ。年下の君達に嫌な思いをさせてしまったな」


 悲しそうにそう言う宮本さん。俺が古谷さんを見ると、さすがに気まずいと感じたのか、古谷さんは俺から目を逸らした。


「あ、あはは……俺達まだ子供だから、まだわからないことばっかりで、宮本さんの悩みとかもわからないですよ……だから、そんな気にしないでください」


 俺がそう取り繕うようにそう言うと、宮本さんは俯いたままだった。


「そう。わたしたち、こども。あなた、おとな」


 と、小室さんが抑揚のない声でそう言った。


「あ、あはは……だね。小室さん」


「だから、くるま、うんてん、できる」


「……え? 車?」


 そう言われて俺は気づいた。そして、宮本さんを見る。


 宮本さんも同様に目を輝かせて俺を見ていたのだった。

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