ゾンビと人間 3
「……え? なんですって?」
俺が尋ね返すと、宮本さんはなぜか俺のことを憐れみのこもった視線で見てくる。
「君は……あの二人に騙されているんだよ」
真剣な顔で、信じられないようなことを宮本さんは俺に言った。俺はどういうふうに反応していいのかわからず、ただ呆然と宮本さんを見ていた。
「え、えっと……すいません。よく意味がわからないんですが……」
俺がそう言うと、宮本さんは俺の方にさらに近づいてきた。そして、俺の耳元に口を近づけて話を続ける。
「いいか? あの二人は一見確かに人間だ……だが、中身は外で暴徒化している市民と全く変わらないのだぞ?」
そう言うと宮本さんは俺の耳元から口を離し、俺のことを悲しそうな目線で見る。
「私だって、こんなことを言うのは辛いんだ……だが、君は明確な人間だ。私としては市民を守ることが警察官である私の義務であると感じている。だからこそ、君にこんなことを敢えて言うんだ」
俺はそう言われてなんと返事すればよいのかわからなかった。それで「はい、そうですか」とは言えない。
なぜなら、俺には小室さんや古谷さんが俺を騙しているとか、むしろそんなことの方が信じられないからだ。
「……もし、小室さんと古谷さんが俺を騙しているとしたら……どうしたら良いっていうんですか?」
俺がそう尋ねると宮本さんは少し戸惑ったようだったが、コホンと咳払いをして俺のことを見る。
「無論、お……お姉さんがなんとかしてあげよう!」
なぜか妙に張り切った様子で、宮本さんは俺にそう言った。得意気にそう言って見せて入るが、どうも、どこか無理をしているようにみえる。
「とにかく! 君の安全は私が保証する! 私の言うことにはキチンと従ったほうがいいぞ?」
「あ……は、はい……」
「……へぇ。臆病な婦警さんの言うことに、従ったほうがいいんですか」
と、いきなり聞こえてきた声に俺と宮本さんはそれが聞こえてきた方に振り返った。
「ひっ」
そう言って宮本さんが小さく悲鳴をあげ、俺の後ろに隠れる。
見ると、扉を開けて、小室さんと古谷さんがその隙間から俺と宮本さんのことを見ていたのだった。




