ゾンビと人間 2
「ど、どういうことだ?」
「二人は人間ですよ。宮本さん」
「え……だ、だって……あの二人は……」
「人間ですよ。そうでなければ、俺はあの二人と一つ屋根の下でなんか暮らせるわけがない」
俺がそう言うと、宮本さんはそれでも不満そうだった。そして、ジト目で俺のことを見ている。
「な……なんですか?」
「わ……私は、正真正銘の人間だぞ」
「へ?」
そして、俺の方にずいっと近づいてきた。俺よりも少し背の高い宮本さんは俺を見下ろしながらジッと俺のことを見ている。
「ど……どういうことですか?」
「……君は、正真正銘の人間である私より、あの二人の方が良いっていうのか?」
「へ? ど、どういう意味ですか?」
俺がそう尋ねると宮本さんは、ジト目で少し不機嫌そうにしながら俺を見る。
「……私はね、赤井君。君に会えてどんなに安心したか、わかっているのか?」
「え……あ、ああ。はい」
「わかってない! 君はわかってないんだ。ずっと一人で、警察署にいて……いつ襲われるかわからない恐怖……そして、勇気を出して外に出てみれば、ゾンビに囲まれて……もうだめだ、っていう時に、君は助けに来てくれたじゃないか!」
少し恐怖すら感じさせるような迫力で、宮本さんは俺にそう言ってきた。
「え……ええ。まぁ。でも、ゾンビが追い払えたのは小室さんのおかげですし……」
「そんなの関係ない! 君が私を助けようとしてくれたんだ! 私は警察官として、一人の人間として! 君に感謝しているんだ!」
そこまで言うとなぜか宮本さんは少し恥ずかしそうにしながら、俺から目を逸らす。
「そ、それに……君は勇敢だ。市民が暴徒化した時、警察署にいた者達は誰一人として私を助けようとせずに逃げ出してしまった……いつも缶コーヒーを奢ってくれた先輩も、うるさい上司も……だが、君はそうじゃなかった。私を助けてくれた……私は君のことをかっこいい男だと思うぞ」
そんなことを言われて思わず俺は少し驚いてしまった。というか、それ以上にそんな風に言われるのは予想外だったので、少し恥ずかしかった。
「あ、あはは……そ、そんなことないですよ」
「いや、ある。だからこそ、私から一つ言わせてもらおう」
「え? なんですか?」
俺がそう尋ねると、宮本さんは難しそうに眉間に皺と寄せて俺のことを見ていた。
「……君は、騙されているんだ」




