残念な婦警さん 5
「……え? 気付かなかった?」
思わず俺は聞き返してしまった。すると、モジモジと恥ずかしそうにしながら、宮本さんは俺から視線を逸らした。
「そ、その……道に迷って……後ろを振り返ったら……ゾンビがたくさんついてきていて……それであの行き止まりに……」
「え……ゾンビについてこられていることに、気付かなかったんですか?」
俺がそう訊くと、宮本さんは少し戸惑っていたようだったが、その後、小さく……本当に小さく頷いた。さすがに予想外の答えに俺含めその場にいた他二人も黙ってしまった。
「……ば……馬鹿にしたければ……するがいいさ」
俺達が何も言わずにいると、宮本さんが半分自嘲気味にそう言った。まるで、失敗してしまって拗ねている子供のようである。
「え……べ、別に馬鹿にしてなんていませんよ」
俺は苦笑いしながらそういった。しかし、宮戸さんはジト目で俺のことを見てくる。
「……ふんっ。いいんだ……くそぉ……せっかくあこがれの警察官になれたと思った矢先、市民は暴徒化するし、その対応でまともな仕事も全然できないし……不幸だ」
そういって大きくため息をつく宮本さん。
俺にはわからなかったが、働いている彼女には彼女なりの悩みがあるのだろう。もっとも、働いている宮本さんは、どうにも俺よりもなんだか子供っぽい感じはするのだが……
「そんなことより、それで、しょくりょう、おわり」
その雰囲気の中で、何も躊躇うことなく小室さんは絶望の一言を言ったのだった。




