残念な婦警さん 2
古谷さんの言葉を聞いて、如実に宮本さんがビクッと反応したのがわかった。
「は……ははっ……じょ、冗談がうまいようだな。君の隣の少女は」
「少女、じゃありません。私の名前は古谷クレアです。ちなみに、アナタの隣に座っている子もゾンビですよ?」
古谷さんの言葉に、宮本さんはゆっくりと顔を動かして、隣に座っている小室さんを見る。
「こむろ、ありす。よろしく」
そして、小室さんが礼儀正しく挨拶をした。
「あー……ぞ、ゾンビ……あはは……ゾンビというのは……何かな?」
明らかに無理しているようで、額に脂汗を書きながら、宮本さんはそう言った。小室さんと古谷さんも顔を見合わせている。
「えっと……そうですね。とにかく、宮本さん。小室さんと古谷さんは宮本さんに危害を与えようなんてことはないので安心してください」
俺がそう言ってみるが、宮本さんは小刻みに震えているのがわかる。
「そ、そうか……なら、安心だな」
「え~? でも、私達、もしかすると、アナタのこと、食べたく成っちゃうかもしれませんよ~?」
さも馬鹿にした感じで古谷さんがそう言った。目を丸くして宮本さんが古谷さんのことを見る。
「ふ、古谷さん……」
「赤井君のことは食べないって保証できますけど、婦警さんのことはどうですかね~? どうです、小室さん?」
古谷さんにそう言われて、小室さんはゆっくりと宮本さんのことを見る。宮本さんが小さく「ひっ」と悲鳴をあげるのがわかった。
「あなた、おいしそう」
小室さんがそう言った途端、椅子に座っていた宮本さんはそのまま後ろにひっくり返ってしまった。
「み、宮本さん!?」
俺が慌てて駆け寄ってみると、宮本さんはまたしても、完全に気絶してしまっているようで、白目を剥いて気絶していた。
「あちゃー……こりゃあ、本格的にゾンビがダメみたいですね」
にやにやしながら古谷さんがそう言った。
「……古谷さん。ダメだよ。あんまり怖がらせたら」
「はいはい。それにしても、私達より大人なのにこんな怖がりで、よく警察官なんてできますね」
「まぁ……仕方ない。とりあえずソファに寝かせておこう。古谷さん、手伝って」
「えー? この人意外と重そうですよ?」
「……知っているよ。ほら、手伝って」
結局、床に気絶させたままにしておくわけにもいかないので、俺と古谷さんが協力して宮本さんをソファに寝かせることにした。
その後、ゾンビである二人の一つ屋根のしたに放置するわけにもいかないので、俺はコンビニにもいかずに宮本さんが再び目を覚ますのを待った。
しかし、宮本さんはなかなか目を覚まさず、結局夜になってしまった。




