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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター8
55/204

残念な婦警さん 1

「……いや、まったく、その……本当にすまなかった……」


 俺の向かいに座った婦警さんは、申し訳なさそうに俺に頭を下げた。


 結局、俺が家まで背負ってきた後、しばらくしてから婦警さんは目を覚ました。


 正直、想像していたよりちょっと重かったが、そのことに関しては婦警さんに言わないようにしておいた。


「あ……いえ。いいんですよ。それにしても助けられて良かったです。俺は赤井レオって言います。婦警さんは?」


「ああ……私は宮本サエコだ。この近くの警察署に務めている警察官だ」


 婦警さんは宮本さんと言うらしかった。短い髪に凛とした顔つきは、いかにも頼れる婦警さんといった感じである。


「えっと……宮本さんはどうしてあんなところにいたんですか?」


「ああ。その……今、街中には暴徒化した市民達が多いだろう?」


「暴徒化? ああ、ゾンビのことですね」


 俺がゾンビというと、宮本さんはその綺麗な顔をゆがめて俺をにらんだ。


「……あ、赤井君。ゾンビ、とは何のことだ?」


「え? だって、ゾンビはゾンビでしょ?」


「ふっ……あ、あははっ!」


 すると、ふいに宮本さんは大きな声で笑い出した。俺は思わずキョトンとしてしまう。


「え……どうしたんですか?」


「ふっ……赤井君。いいか。この世界にゾンビなんているわけがない。あれは映画やゲームの想像上の存在だ。だから、ゾンビなんていないんだ」


「でも、宮本さんは今日、そのゾンビに襲われて――」


「ゾンビではない! あれは、暴徒化している市民達だ!」


 宮本さんは俺の言葉をさえぎって興奮気味にそう言った。その表情はあくまで「ゾンビ」という言葉を俺に口にしてほしくないという、感情の表れそのものだった。


「もしかして……婦警さん、ゾンビが怖いんですか?」


 そこへ、馬鹿にしたような声が聞こえてきた。しかし、その声を聞いても、宮本さんは反応することもなく、俺の顔を見たままである。


「……赤井君」


「え? な、なんですか?」


「……その、先ほどからずっと気になっていたんだが……君の隣と私の隣にいる二人の少女は……やけに青白い肌をしていないか?」


 あくまでそちらの方には顔を向けないようにしながら、宮本さんは俺に訊ねてきた。


「あー……まぁ……そうですね」


 俺はそういって小室さんと古谷さんの方を見る。


 小室さんは相変わらずの無表情だが、古谷さんは何かを企んでいるようでにやにやとしている。


「そりゃあそうでしょ。私達、ゾンビですから」


 そして、古谷さんは嬉しそうにそう言った。

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