頼れる婦警さん 5
「あ、小室さん」
俺が顔を向けると婦警さんも小室さんの方に顔を向ける。ゆっくりとした動作でやってくる小室さんを見ていると、なぜか隣の婦警さんが急に震えだした。
「あ……き、君……あ、あれは?」
「え? あれって? ああ。えっと、僕の友達っていうか、同居人ですね」
「え……き、君、だ、だって、あ、あれは、ぞ、ゾン――」
小室さんは既に俺と婦警さんの近くまでやってきていた。そして、婦警さんは、小室さんの青白い肌と、死んだ魚の目をまじまじと見ていた。
「え……ど、どうしたんですか?」
「ど、どうしたもなにも……なんで君は落ち着いていられるんだ!?」
既に婦警さんは錯乱気味だった。
「え……だって、小室さんは俺の同居人だし……」
「同居……同居!? き、君はこれと同居しているっていうのか!?」
婦警さんはさらに興奮気味にそう捲し立てる。俺としてもそろそろ不安に思っていた。
それは先程から小室さんがイライラしているように見えたからである。
もちろん、いつも通りの無表情であったが、どこか怒っているように見えたのである。
「あー……大丈夫ですよ。小室さんは別に何もしませんよ」
「そういう問題じゃない! こ、コイツはぞ、ゾン――」
そう婦警さんが言おうとした時だった。
小室さんがいきなりガシっと婦警さんの腕を掴んだ。
「あ……ぞ、ぞ……ひっ……食べられ……」
すると、いきなり婦警さんはその場に倒れてしまった。
「え……ちょ……だ、大丈夫ですか!?」
俺は慌てて呼びかけるが、完全に婦警さんは気絶してしまっているようだった。
「あ……ど、どうしよう? 小室さん」
しかし、小室さんは不満そうに俺と婦警さんを見ていた。
「小室さん?」
「そのひと、わたしに、たいして、しつれい」
「え? ……あ、あはは。確かにね」
俺はそう言いつつ、目の前で完全にのびてしまっている婦警さんを、どうやって家にまで運んだものか考えていたのだった。




