頼れる婦警さん 3
「小室さん!」
そして、リビングに急いで戻ると同時に小室さんのことを呼んだ。
小室さんと古谷さんはのんびりとお茶を飲んでいる最中だった。
「なに。あかいくん」
「ちょっとごめん。一緒に来て!」
俺はそう言ってそのまま小室さんの手を掴んだ。そして、玄関の扉を開け、自転車を出す。
「あかいくん。ごういん」
背後から小室さんの不満そうな声が聞こえてくる。
「ごめんね……でも、一刻を争うんだよ!」
俺がそう言うと小室さんも状況がわかったんか、しぶしぶ自転車の後部座席に腰を下ろした。
「わかった。はやく、いって」
「うん! 行くよ!」
俺は小室さんが後部座席に座ったのを確認してから、そのままペダルを漕ぎだした。
今回はこの前駅まで行った時よりもさらに早く、限界まで早くしようとしてペダルを漕いだ。
家からあの婦警さんが追い詰められていた路地まではほんの数分のはず……だったら、なんとかあの婦警さんが持ちこたえてくれていれば俺は間に合うことができる。
「間に合ってくれ……!」
俺はそう願いつつ、さらにペダルを漕いで自転車を加速させた。
二人乗りというハンデを背負いつつも、なんとか俺は双眼鏡で見た路地まで三分で着くことが出来た。
すでに路地の入口にはゾンビの群れがあふれているのが確認できる。俺はいったん自転車をとめた。
「で、どうしたの」
そこまでいって相変わらずの無表情で小室さんは俺に聞いてきた。
「あ……えっと、あの路地なんだけど」
「うん。ぞんび、たくさん」
「……あの奥に人がいるんだよ。このままだとゾンビにご飯になっちゃうと思うんだけど……」
俺がそういうと小室さんは俺が言いたいことが理解できたようだった。
「わかった。ぞんびたち、せっとくする」
そういって小室さんはそのままゾンビの群れに向かっていった。
俺だったらとてもできないことだと思ったが、小室さんはなんの躊躇もなくそのまま行ってしまったのである。




