頼れる婦警さん 1
それからさらに二週間が経った。
テレビではすでに何チャンネルかが放送を停止してしまっている。
いまだにやっているのは、いつもアニメばかり流していた民放と、国営放送だけだ。
個人的にこのアニメばかり流していた民放が放送を停止してしまったら、いよいよ世界の終わりかなと俺個人は思っていた。
国営放送の方でやっているニュースでは相変わらずワクチンの開発はまだ開発中だとのことだ。こうなってくると実はワクチンなんて開発していないんじゃないかとさえ思ってしまう。
そして、もうひとつ、ゾンビ駆逐部隊の法案は国会ではどうやら審議を通るらしい。
通ったら通ったで、果たしてどうやって回復力のすさまじいゾンビを倒すのか、俺にとっては謎だった。
とまぁ、すでに色々と何もかもが少しずつ終わりつつあるような状況だったが、目下の問題として俺の家では非常にまずい状態が起きていた。
「……さて、どうしようか」
テーブルに座っているのは俺、その隣に小室さん。さらにその向かいには古谷さんが座っている。
そして、俺達の目の前、テーブルの上には一個のカップラーメンが置かれていた。
「……これが、我が家の最後の食事です」
俺の言葉に、部屋の中はシーンとなった。そして、俺と小室さん、古谷さんはそれぞれ互いに視線を交わした。
「……俺、食べていいかな?」
単刀直入に俺は聞いて見た。すると、小室さんと古谷さんが俺の方を見る。
「え……ええ。もちろんです。この中で食事が必要なのは人間である赤井君だけですからね」
古谷さんが妙に上ずった声でそう言った。
「あかいくん。はやく、たべて」
小室さんは相変わらずのんびりとした様子で喋っていた。
ここで問題なのは古谷さんだ。さっきからそう言いながらもちらちらとカップラーメンの方を見ている。
おそらくゾンビである彼女は食事自体は必要ないのだろう。しかし、小室さんと違い古谷さんはゾンビの度合いが低い。
そうなると古谷さんも本当はこのカップラーメンが食べたいはずなのである。
「……よし」
俺は席を立った。小室さんと古谷さんは俺を見る。
「食糧調達、しよう」
そう言うと二人は何も言わずコクリと頷いた。




