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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター1
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終わった日常 5

「よし……入ろう」


 俺は安心してそのままコンビニの自動ドアをくぐることにした。


 しかし、それがどうにも最後にして最大の油断だった。


『いらっしゃいませ~』


 自動ドアが開くとともに、軽快な音楽、そして、電子音声が響いた。


 俺は心臓が大きく跳ねるのを感じる。そして、ゆっくりと後ろ振り返る。


「あ」


 見ていた。二人のゾンビは、確実に俺の方を見ていた。


 そして、一方がゆっくりと足をこちらに踏み出してきた。さらに、そのままこちらへ歩いてくる。


 やばい。これは、確実にやばい。


 俺はそのままコンビニの中に駆け込んだ。


 無論、こういう場合も想定していなかったわけではない。だから、半パニック状態でも俺は次の行動を考えていた。


 俺はコンビニの店内を駆け、そのままトイレに駆け込む。


 そう。トイレだ。


 コンビニの店内で安全性を考えた場合、まずトイレがある。


 もちろん、映画のお約束なんてわかっている。それを考えた場合トイレに駆け込むなんていうのはナンセンスだ。


 だけど、この状況では他にどうすることもできない。すでにゾンビはこちらに向かっているのだ。


 走って逃げる、という選択肢もあるが、それでもし捕まってしまったらどうする? だが、トイレに入ってしまえば、安全だけは保障される。


 ゾンビ病の人間は、別に腕力が特別強化されたりすることもない。見たところ、生前と変わらない感じである。


 だったら、トイレに隠れていれば中に侵入されることはまずないだろう。あの二人のゾンビが大人とはいえ、トイレの扉をやぶってくることはまずない。


 だからこそ、俺はトイレの中に逃げ込んだのだ。


「……ふぅ」


 トイレのカギを閉め、俺は大きくため息をついた。


 これで、まずは安全だ。後はあの二人のゾンビがコンビニからなんとか出て行ってくれることを願うしかない。


 もっとも、うろうろタイプには縄張り意識のようなものがあるようで、ある日、そこからいなくなっても、その次の日には元の場所に戻っているのを俺は双眼鏡で確認している。


 だから、少しこのトイレでやり過ごせばなんとかなる。


「あー……うー」


 その時、俺の耳に聞こえてきた声。


 それは、ゾンビ病をお発症した人間が発するあの意味のない鳴き声だ。


 かなり近くから聞こえてきた。俺はあることを思い出す。


 そうだ。ゾンビ映画でトイレに籠ってはいけない理由。


 それは一つしかない。


 ゾンビが、既にトイレにいる可能性があるからだ。

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