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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター7
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闇夜の探索 10

 古谷さんはしばらくそのままじっとしていたが、しばらくすると、古谷さんのその小さな肩が小刻みに震え、目の端にうっすらと光るものが見えた。


「あ……古谷さん?」


「……馬鹿みたい、ですよね」


「え?」


 古谷さんは両目を擦って、顔をあげた。


「……私、怖かったんです。見た目はゾンビなのに、中身は人間で……こんなことなら、きっちりゾンビになりたかったですよ……」


「そんな……古谷さん」


「……赤井君。私……不気味ですよね? 中途半端なゾンビなんて、気持ち悪いですよね?」


 古谷さんは心配そうに俺にそう訊いてきた。


 そんな質問を受けて俺は思わず戸惑ってしまった。


「えっと……それって、怖い、ってことかな?」


 思わず俺は古谷さんにそう聞き返す。


 古谷さんもキョトンとしてしまっていた。


「え……ええ。まぁ……」


 戸惑いがちにそう答える古谷さん。


 もちろん俺の答えは決まっていた。


「それは、ないよ」


「……え?」


 古谷さんは完全に狐に摘まれたように俺を見ている。


 しかし、俺の答えはまさにその通りだった。


「あはは……怖くないよ。気味悪くもない。だって、俺と古谷さんは意思疎通ができるじゃないか。それに、俺は小室さんのことをゾンビとは思ってないから。小室さんのことは、人間だって思ってる」


「え……じゃあ、赤井君……」


「うん。だから、俺にとっては古谷さんも人間。中途半端だろうがなんだろうが、俺のことを美味しそうって思わなければ人間だよ」


 自分でも上手く言葉として伝えることができているかどうか不安だったが、とにかく俺の意見はそれだった。


 古谷さんは俺の言葉を聞いてしばらくはポカーンとしていたが、しばらくしてまるで呆れてしまったかのように小さくため息をついた。


「……なんだか、バカみたいですね」


「え? どうして?」


「いえ。細かいことだったんだな、って。じゃあ、私も赤井君の言葉を信じてみようかな、って思います」


 古谷さんはそう言って笑顔を見せてくれた。


 どうやら、古谷さんの中での悩みは一応の解決を見せたようだった。


「そっか。よかったよ」


「あはは……ごめんなさい。勝手に外に出たりして……危険じゃなかったですか?」


 心配そうにそう訊ねる古谷さん。俺は小室さんの方を見る。


「あ、ああ。大丈夫。小室さんのお陰で安全にここまで来られたから」


「え? そうなんですか?」


「そう。だから、あやまるひつよう、ない。あかいくんのいえ、かえろう」


 小室さんのその言葉を聞いて、古谷さんは安心したようで、俺と小室さんを見た。


「……はい!」


 そして、ゾンビとは思えないような元気な声でそう返事をしたのだった。

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