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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター7
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闇夜の探索 8

 街灯の明かりに照らされた小さなベンチ。


 そのベンチに、古谷さんは居心地悪そうに座っていた。


「古谷さん……何しているのさ。ここで」


 俺が訊ねると、古谷さんは気まずそうに俺から顔を反らした。


「古谷さん」


 俺がもう一度強い口調で呼び掛けると、ゆっくりとこっちに顔を向けてきた。


「……な、なんですか」


「なんですか、じゃないよ。まったく……探したんだよ。勝手にいなくなっちゃうから」


「……私、別に探してくれなんて言ってないんですけど」


「なっ……古谷さん! その言い方はないんじゃないの?」


 俺がそう言っても古谷さんはまったくいにかいしていないようだった。


 不貞腐れたように……というか、完全に不貞腐れているようで、頬を膨らませて俺から視線を反らした。


「はぁ……とにかく。家に帰ろうよ。ここにいたら危険だって」


「……危険? 何がです?」


「え? そりゃあ、ゾンビが襲ってくるかもしれないし……」


 俺がそう言うと、古谷さんはふんっと鼻を鳴らした。明らかに馬鹿にした態度である。


「ゾンビが襲ってくるって……私、ゾンビなんですけど?」


「え、あ……まぁ……」


「ゾンビである私をゾンビが襲ってくることはないでしょ。そんなこと、このゾンビだらけの世界でまだ人間のままでいる赤井君なら十分わかっているでしょ」


「そ、それは……」


「わかったらさっさと帰ってください。私は、一人でも大丈夫ですから」


 俺はなんと言葉を返したらいいのかわからなかった。


 無論、そう言われて、はい、そうですか、といって帰るわけにはいかない。


 ここに来るまでにも相当の苦労があったのだから。


 それに何より、俺は古谷さんんをどうにかして連れて変えならければいけないのである。


 しかし、なんと言ったらいいのか……


「おい」


 と、俺が戸惑っているうちに、俺の背後からぶっきら棒な声が聞こえてきた。


 振り返ってみると、そこにいたのは、小室さんだった。


「……アナタですか。なんですか。アナタも、私を迎えに来たんですか?」


 不機嫌そうに返事をする古谷さん。


 小室さんはゆっくりと俺の前に歩いてくると、その死んだ魚の目で、じっと古谷さんを見ていた。


 「あなた、こども」


 「……は?」


 そして、小室さんは古谷さんに向かってこう言ったのであった。

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