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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター7
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闇夜の探索 7

「あ」


 小室さんの短い叫び声が聞こえたが、俺は構わずにそのまま走りつづけた。


 暗い夜道を俺達はそのまま走る。


 ゾンビが出てこないことを願いながら、ひたすら走った。


 感じるのは頬を撫でる春の生温かい夜の風と、小室さんの手の冷たさくらいだ。


 こんなにも走って俺が手を引いている小室さんが大丈夫かどうかは不安だったが、俺はとにかくそのまま走った。


 そして、俺達は幸運なことに、ゾンビに遭遇することもなくなんとか公園の入り口にまでたどり着いた。


「はぁ……なんとか、着いた」


「うん。ついた」


 と、小室さんは、ぜぇぜぇとあえぐ俺の頭の上から淡々とした口調でそう言った。


「小室さん……疲れて……ないの?」


 なんとか息を整えながら、俺は小室さんに訊ねた。


「うん。へいき」


「あ……そう」


 ゾンビだから疲れないのか……


 古谷さんの「すぐに傷も回復する」ということと結びつけて考えると、ゾンビって案外便利な身体なのかもしれないな……


「あかいくん。ふるやさん、さがす」


 小室さんに言われて俺は、もっとも重要視すべき本来の目的を思い出す。


「あ、うん。探そう」


 気を取り直してさっそく古谷さん捜索を開始することにした。


 といっても、公園にゾンビが潜んでいないとは限らない。


 もし、うっかり遭遇して襲われでもしたら俺までゾンビになってしまう。


「さて、どうしたものか……あれ?」


 と、なんとかゾンビへの安全性に考慮しながら捜索を開始しようとした矢先、そんな必要はないことはすぐにわかった。


「あれ、ふるやさん」


 小室さんもその姿を認めたようだった。


 俺達の視界の先、ベンチにチョコンと座っている見覚えのある制服の女の子。


「古谷さん!」


 思わず大きな声で俺は呼び掛けた。


 音がゾンビを引き寄せることは十分わかってはいたが、呼び掛けずにはいられなかったのである。


 俺の声にすぐに気付いたようで古谷さんはこちらを見た。


 そして、目を丸くしているのがここからでもわかる。


「あかいくん、さき、いって」


「え? いいの?」


「うん。すぐ、いく」


「で、でも……」


 俺が戸惑っていると、小室さんは促すように俺のことをゆっくりと押してきた。


「はやく、いく」


「あ……わかったよ」


 小室さんにそう言われ、俺はそのまま古谷さんのもとに駆け寄っていった。

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