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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター7
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闇夜の探索 5

「え? 小室さんの、真似?」


 すると、小室さんはいきなり「あー」と、ゾンビらしい鳴き声を発した。


 俺はそれがどういう意味なのか理解できず首を傾げた。


 すると、ムッとした感じで小室さんは俺を見てきた。


「まね。して」


「え? あ、うん」


 俺はとりあえず「あー」と言ってみた。


 すると、小室さんはフルフルと横に首を振った。


「だめ。それじゃ、ぜんぜん、だめ」


「え? どういう風にダメなの?」


「それ、ぜんぜん、ぞんび、ちがう。もっと、ぞんび、らしく」


「……は?」


 俺はその時になって小室さんの言っている事、そして、俺にやらせようとしている事の意味がわかった。


 もしかして……いや、もしかしなくても、小室さんは俺にゾンビの真似をやらせようとしているというのか?


「ちょ……ちょっと待ってよ。あのねぇ……いくらゾンビの真似をしたからって、襲われなくなるはずないでしょ?」


 さすがに俺もそれは無理だろうと思って小室さんに異を唱える。


 しかし、小室さんは納得しないようだった。


「だいじょぶ。ぞんび、にんげんとぞんび、そこまできちんと、くべつ、してない」


「えー……でも、人間を見たら襲ってくるじゃないか」


「それは、にんげんっぽければにんげん、おそう。にんげんかぞんびか、わからなければ、ぞんびもおそわない」


 小室さんはあくまで真剣のようだ。本気でゾンビの真似をすれば、あの中年ゾンビの前を堂々と通っても平気なのだと言うのか。


 確かに、やったことがないから何とも言えないということはある。


 俺はゾンビをやり過ごすためにゾンビの真似をしたことがない。というか、普通そんなことをするはずもないだろう。


 ……でも、一つ思い当たる節はある。


 古谷さんのことだ。古谷さんは、俺達と出会う直前までゾンビとして振舞っていた。


 だけど、彼女は見た目はゾンビだが、中身は完璧人間である。


 そんな彼女がゾンビの真似をしていても襲われなかった。とすれば、もしかすると、俺だってゾンビの真似をすれば襲われないんじゃないだろうか?


「あかいくん」


「え? な、何?」


 俺がそんな風に考え込んでいると、小室さんが俺の顔を覗き込んできた。


 死んだ魚の目が、俺のことを真っ直ぐに見つめてくる。


「わたし、しんじない?」


 そう言われてしまっては、俺としてもさすがに小室さんの提案を拒否することはできない。


「え……あ、いや。そんなことは……ないよ」


 ……そうだ。小室さんが適当を言っているとは思えない。


 だとすれば、それは真実なのだ。俺は彼女の言葉を信じるしかない。


「……よし。行こう、小室さん」


 俺が覚悟を決めたのがわかったのか、小室さんは小さく頷いた。

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