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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター6
43/204

闇夜の捜索 4

「あ」


 俺は思わず声をあげてブレーキをにぎった。


「どうしたの」


 小室さんが訊ねてくる。俺は何も言わずに顎で方向を指し示した。


 俺達の数メートル先にゾンビが立っているのが見えたのだ。


 見たところスーツを着ている中年の男性ゾンビのようだった。


 街灯の下に突っ立ったままで動こうとしない。


「こまったな……公園まで後少しなのに……」


 すると、後部座席がいきなり軽くなった。


「え? 小室さん?」


 見ると小室さんが後部から降りて既にゾンビの方へ向かって歩き出していた。


「ちょ、ちょっと……」


 すると、小室さんがこちらに振り返る。


「わたし、あのひと、と、はなし、つけてくる」


 そういって小室さんはゆっくりとした足取りで中年ゾンビの方へ向かっていった。


 そして、小室さんがやってきたことに気付くとゾンビはこちらに顔を向けた。


 俺は慌てて自転車と一緒に角の影に隠れた。


 しばらく、角の向こうからかは「あー」とか「うー」とかいうゾンビトークが聞こえてきていた。


 しかし、数分した後、それも聞こえなくなった。


 そして、俺が恐る恐る壁越しに角の向こうを覗いてみた。


「あ……小室さん」


 見ると小室さんがゆっくりとこちらに帰ってきていた。


 そのいつも通りの青い白い無表情は、ここから見ていてもあまり喜ばしい感じのするものではなかった。


 そして、角を曲がって俺の前に立った小室さんは、大きくため息をついた。


「あ……ダメ、だった?」


 俺が訊ねると、小室さんは小さくうなずいた。


「そっか……まぁ、仕方ない。他の道を探そう」


「……だめ。このまま、いく」


 思わぬ小室さんの言葉に、俺は戸惑う。


「小室さん……ダメって言っても、無理だよ。この道を自転車で行けば確実にあのおっさんゾンビの前を通らなきゃいけないし、今日は武器になるものも持ってきてない。襲われたらひとたまりもないよ」


「だいじょぶ。わたし、さく、ある」


 そう言われて俺は思わず驚いてしまった。


「え……策? どんな?」


 すると、小室さんはなぜか少し恥ずかしいのか、俺から顔を反らした。


「あ……小室さん。恥ずかしがってないで教えてよ」


 俺がそう訊ねても小室さんは言い辛そうに顔を逸らしたままだった。


 かといってこうしている間にも古谷さんは危険な目にあっているかもしれないのだ。


 こんな風に時間を無駄にしていることはできない。


「小室さん!」


 俺がそう名前を呼ぶと、小室さんも觀念したようで俺の方に顔を向けた。


「……わかった。じゃあ、わたしの、まね、して」


 そして、俺にこう言ったのだった。

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