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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター1
4/204

終わった日常 4

 コンビニまでは十五分であるが、その間にゾンビがいるかどうかはすでに事前に入念にチェックしている。


 家を出てそのまま右方向に直進。その間にゾンビはいない。


 問題は、その後、交差点を左に曲がる。すると、間もなくコンビニがある。


 その交差点にはウロウロタイプが約二体いる。


 ウロウロタイプも近づかなければ問題はないのだが……万が一ということもある。


 俺は十分に注意しながら歩みを進め。間もなく俺の視界の先には交差点が見えた。


 交差点の真ん中では赤と青の車が正面衝突している。


 これは、一週間前、この交差点に入ってきた赤い車のドライバーが車内でゾンビ病を発症し、そのまま青い車に突っ込んだのだ。


 車の中から出てきた青い車のドライバーは、赤い車のドライバーに文句を言おうとして、逆にそのまま食べられてしまった。


 その一部始終を、俺は割りと冷静に双眼鏡で眺めていた。


 もっとも、俺が駆け着けたところで青い車のドライバーが助かったのかと聞かれると、答えはNOであるが。


 だから、交差点でウロウロしている二人のゾンビ。


 それは、青い車と赤い車のドライバーなのである。


 ゾンビ病の特徴に関してもう一つ言っておくと、よくあるゾンビ映画の設定そのままに、ゾンビに噛まれると感染するというものがある。


 といっても、噛まれてゾンビになるのは一定数の人間である。


 というのも、多数のゾンビに襲われた場合、文字通り、そのままゾンビに文字通り、骨の髄までしゃぶられてしまうため、ゾンビになることもできないのである。


 つまり、一定数の人間……一人の人間が一人のゾンビに噛まれた場合に限り、ゾンビ病に感染するのである。


 これはゾンビ病の特性なのかわからないが、ゾンビ病に対して知っておくべき特徴であると、俺は思う。


 とまぁ、それはいいとして、俺は今一度、交差点でうろうろしている二人のゾンビを見る。


「……よし」


 軽く深呼吸した後で、俺はできるかぎり足音をたてないようにしながら歩き出す。


 なるべく、ゾンビ達には目を向けない。ウロウロタイプの奴らは「あー」とか「うー」とか意味のない鳴き声をあげているが、無論、無視である。


 一歩、二歩、三歩……俺は足元に気をつける。


 こういう場合、誤って缶なんかを蹴っ飛ばしてゾンビが音で反応してしまうっていうのが映画ではお決まりだ。


 だから、足元だけを見て俺は歩いた。


 ちょうど十歩歩いた辺りで、俺は顔を上げる。


「……まだ、あるな」


 コンビニまではまだ何メートルかあった。俺は今一度足元だけを見て歩き出す。


 背後からうろうろゾンビの声が聞こえる。


 あまり暑くないのに、自然と汗が額から一筋流れた。


 そして、それからさらに十歩歩いた辺りで、俺は顔を上げた。


 気付かないうちに、すでにコンビニの入り口までやってきていた。


 まるで安全地帯を前にしたかのように思えて、俺はホッと一安心した。

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