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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター5
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半人、半ゾンビ 5

 家に帰ってきたのは既に日が落ちてしまった時間帯だった。


 しかし、なんとか夜になるまでに帰ってこられたのは幸いである。


 夜になるとゾンビの活動が活発になるとかそういう話を聞いたこともある。


 もっとも、確認したことはないので定かではないが。


「わぁ。綺麗なお家ですね」


 リビングを見渡して古谷さんはそう感心していた。


「あはは……まぁね。小室さんが来るまでは独りで暮らしていたんだけど、気を抜くとすぎ汚くなっちゃうからそこは気をつけていたんだよね」


「へぇ。男の子なのにしっかりしてますね。さすがは、一ヶ月経ってもゾンビになっていないだけあります」


 ほめられているのかよくわからない古谷さんの言葉に対し、曖昧に微笑み返した。


「えっと、まぁ、ソファにでも座ってゆっくりしてよ」


「ああ、ありがとうございます。あ、その前に一つ聞きたいのですが……ご飯は、どうするんですか?」


「え? ご飯?」


「はい。いやぁ、もう何日も食べていないのでお腹減っちゃって、あはは……」


 俺は思わず言葉を失ってしまった。


 ゾンビがお腹が減るだと? だって、小室さんはお腹は減らないって言ってたぞ?


 俺は思わず小室さんの方に振り返ってしまった。しかし、これがいけなかった。


 小室さんの生気のない瞳には、はっきりと悲しそうな色が移されていた。


「あ……小室さん」


「……わたし、もう、ねる」


「え? ちょ、ちょっと。小室さん?」


 俺が止める間もなく、いつもとは比べ物にならないほど……といっても、普通の人間が歩く程度の速さで、小室さんは両親の寝室の方へ行ってしまった。


「え……どうしたんですか。あの人」


 古谷さんが目を丸くして小室さんの背中を見ていた。


 俺は何も言わずにしまったなぁと後悔することしかできなかった。


「……えっと、小室さんのことは俺が後でなんとかするからさ。古谷さんはお腹減っているんだっけ?」


「え? ああ、はい」


「そっか。じゃあ、ご飯にする?」


「え? いいんですか?」


 嬉しそうにそう言う古谷さん。


 俺は頷きながらも彼女に悪い気がしてならなかった。


 なぜならば、ご飯といっても我が家に今存在するのはカップラーメンと冷凍食品しかないからである。


 結局、俺と古谷さんは二人で一個ずつのカップラーメンと、冷凍食品の餃子をレンジでチンして食べることにした。

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