半人、半ゾンビ 4
思わず俺と古谷さんは顔を見合わせてしまう。
「あー……小室さん、でしたっけ?」
古谷さんがそう訊ねると、小室さんは無表情のままで古谷さんを見る。
「うん。だけど、きやすく、よぶな」
あまりの発言に俺も驚いてしまった。
古谷さんにしても同様のようである。
「え……ちょっと、小室さん?」
俺がそう言うと小室さんは俺のことをジッと見てきた。
見られた俺は思わず何も言えなくなってしまった。
「はぁ? ちょっと……アナタねぇ、なんでそんなこと言うんですか? そもそも、私は赤井君の家に行っちゃいけないなんて、アナタに決める権利ないでしょ?」
古谷さんがそう迫ったが、小室さんは動じる様子もない。
「けんりとか、そういうもんだい、じゃない。ぞんびは、いっかに、ひとり」
「何を言っているんですか。そんな一家に一台の家電製品じゃないんだから……赤井さん。私も行ってもいいですか?」
「え? ああ、俺はいいけど……」
俺はそう言ってから、チラリと小室さんを見る。相変わらず無表情ではあったが、どこか不機嫌そうに見えなくもない。
もしかして、小室さん、古谷さんのことをあまり気に入らないんだろうか?
確かに小室さんと違って、話すのも大分上手だし、大分ゾンビらしからぬゾンビだからなぁ……
「と、とにかく。ここにずっといるのは不味いよ。他のゾンビも集まってきちゃうかもしれないし……」
「ああ、そうですね。じゃあ、赤井君の家に行ってもいいですか?」
「うん。いいよ。小室さんも、いいよね?」
しかし、それでも納得出来ていない様子の小室さん。ちょっと嫌な予感がするが……とにかく帰った方がいい。
俺は小室さんに自転車の後部に再び指示すると、俺自身は自転車を手押しして、古谷さんと並んで歩いて帰ることにしたのだった。




