半人、半ゾンビ 3
そう言った古谷さんは、俺に対して手を差し出してきてくれた。
思わず俺はその手を握り返す。
冷たかった。
こんなにも死人のような感触……間違いなく、ゾンビ病患者の手の冷たさだった。
「あれ、どうかしましたか?」
「え? あ、ああ……ちょっと、手が冷たいなぁ、って」
「え? そ、そうなんですか? う~ん……私、自分がゾンビになったって実感がなくて……なにか変ですか?」
何か、変って……肌の色は青白いし……
しかし、古谷さんは小室さんと違って、その目は死んだ魚のような目ではなかった。
普通の人間と同じである。それを見ていると、なんとなく俺は安心してしまった。
「あー……うん。まぁ、ちょっと人間とは違うかなぁ」
「そうですか……やっぱり、私、ゾンビになっちゃったんだなぁ……」
「そう。あなた、ぞんび」
古谷さんが少し落ち込んだ風にそう呟くと、小室さんが間髪いれずにそう言った。
それを聞いて、古谷さんは小室さんの方を見る。
「え……でも、アナタよりはゾンビっぽくないと思うんですけど……」
「ぞんびに、ていどのさ、ない。あなた、も、わたし、も、ぞんび」
「で、でも、喋り方とか……」
それを言うと、小室さんが、じっと古谷さんの方を見る。
古谷さんはその視線が怖かったのか、そそくさと俺の背後に隠れた。
「あ……小室さん。別に古谷さんは悪気があって言ったわけじゃ……」
「……あかいくん、そのこの、みかた」
「え? 味方って……と、とにかく。家に帰ろうよ」
「え? 家、ですか?」
そのワードを聞いて、古谷さんは俺の方にぐっと近寄ってきた。
青白い肌のゾンビに急接近されるのは恐怖だったが、可愛い女の子となれば、それは恐怖だけの感情だけというわけでもない。
「あ……うん。俺の家」
「そうですか……その……よろしければ、私もお伴してよろしいですかね?」
「だ、め」
古谷さんが俺にそう聞いた途端、小室さんが再び、いつもからは想像できないような反射速度でそう言った。




