半人、半ゾンビ 1
そして、小室さんと歩いて駅前までやってきた時だった。
「あ」
俺は思わず声を漏らして慌てて口を手でふさいだ。
「どうしたの」
少し遅れてやってきた小室さんの肩を掴むと、そのまま近くのビルの影に隠れた。
「弱ったな……なんだ、アイツ」
「え? あ、ぞんび」
俺が自転車を置いた駅前の駐輪場付近に、一体のゾンビがウロウロしていた。
見たところ、女の子のゾンビのようだ。制服にスカートという、小室さんと同じような格好をしているが、小室さんの制服とは違うようである。
無論、一体だけだから、強行突破できないこともない。
しかし、今は小室さんと一緒である。できることならば、ここは穏便に済ませたい。
「小室さん、悪いんだけど……」
「うん。はなし、してくる」
そういって小室さんはゆっくりと一体のゾンビの方に向かっていった。
それにしても、ウロウロタイプは普通縄張りをウロウロしているだけだから、こんな風に、それまでいなかったはずのゾンビがいきなり現れるってのは、ちょっとありえない話だ。
もしかして、アイツも小室さんにみたいに、特別なタイプのゾンビなんだろうか。
そうなると、小室さん一人で行かせて、果たしてよかったんだろうか……
「あー……うー……」
と、気付くと既に小室さんは、そのゾンビに向かって話し……というか、呻き声をあげていた。
「あ……あー……うー……」
対する女の子ゾンビの方も呻き声で返してくる。
と、なぜか小室さんの動きが止まってしまった。
そして、なぜかそのまま俺の方にゆっくりと戻ってきてしまった。
「え……どうしたの? 小室さん」
「あかい、くん。あのぞんび、ぞんび、じゃない」
「え? どういうこと?」
「はなし、できる」
そう言われれ俺は意味がわからなかった。
話ができるっていうことは……小室さんみたいに意志の疎通ができるってことだろうか。
「えっと……じゃあ、俺が行ってきても大丈夫なわけ?」
小室さんがゆっくりと頷いた。
俺はいまいち半信半疑だったが……小室さんがそう言ってきたので、ちょっと自分でもあり得ないと思ったが、とりあえず話しかけてみることにした。




