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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター3
25/204

ゾンビ・ライフ 4

「ふぅ。とりあえず、着いた」


 俺の全力疾走が功を奏したのか、当初の予想よりもかなり早く駅には着いた。


「うぅ……はやすぎ」


 小室さんは心なしか、その青白い顔をさらに青白くして、俺のことをにらんでいる。


「あ、あはは……ごめんね。ちょっとテンションあがっちゃって」


「……わたしのいえ、こっち」


 そういって小室さんは自転車の後部から降りた。


 俺は仕方なく自転車を降りる。


 どうせだれにも取られないだろうと思い、自転車は適当に駅の入り口前にとめておいた。


 そのまま俺は小室さんと並んで歩く。


 小室さんのゆっくりとした歩く速度に合わせるのは逆に大変だったが、それでもここで一人で行動してゾンビと出会ってしまっては元も子もない。


「ここ、がっこう」


「え?」


 小室さんが急に止まった。


 見ると、確かにそこは、ウチの近所で有名な女子校だった。


「みんな……ぶじ、かな」


「え……だ、大丈夫じゃない? まぁ、全員無事、ってのはちょっと難しいかもしれないけど……」


 そういってから、俺はしまったと思った。


 小室さんは、その死んだ魚の目で俺のことをじっと見ていたからだ。


 その目は死んだ魚のような目でありながら、悲しそうにうるんでいるようにも見えた。


「あ……ごめん」


「……いい。しかたない。みんな、ぶじ、しんじる」


 そういうと小室さんは再びゆっくり歩き出した。


 俺もその後に続く。


 チラリと女子校の校庭を見てみると、何人か制服姿のゾンビがウロウロしているのが見えた。


 もしかして、小室さん、あれを見ちゃったんだろうか……


「あかい、くん」


「え? ああ、ごめん」


 小室さんの呼ぶ声で俺は我に返る。


 ……いや、今は小室さんの家に行く方が先決だろう。


 そして、俺と小室さんは再びゆっくりとしたスピードで歩き出した。


 幸い、そこから先にはゾンビの姿はなかった。


 俺は必要以上に警戒を払っていたが、小室さんはまるでいつもの下校途中のようになんのことはないといったように平然とした……というか、相変わらずの無表情だった。


 そして、小室さんが不意に一軒の家の前で足をとめた。


「ここ。わたしの、いえ」


「え……そ、そうなの?」


 小室さんは小さく頷いた。


 俺は間抜けに小室さんが立ち止まった一軒の家を見上げた。


「ここが……小室さんの家……」


 そして、さらに間抜けにそうつぶやいたのだった。

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