ゾンビ少女の憂鬱 7
小室さんが人間でないとすれば、俺は一体今何と会話しているんだ?
こんな風に意思の疎通は、ゾンビなんかにはできやしない。
人間にしか、こんな会話、コミュニケーションはすることができない。
だから、俺は小室さんは人間だと思う。
というか、人間と思いたかった。
「ね? だから、その……今はちょっと調子が悪いだけなんだ。そんな時はさ、遠慮せずに助けを求めていいんだよ」
俺がそう言い終わると、小室さんはキョトンとした表情で俺を見ていた。
そして、しばらくしてから俺から再び目を反らし、俯いた。
しばらく沈黙が続いたかと思うと、小室さんが顔を上げた。
「うれしい」
「え?」
そう言いながら小室さんは目を細めていた。しかし、その口元は笑っていなかった。
というか、どうやら口元の筋肉も固まってしまっているのか、うまく笑えないようである。
「わたし、うれしい。でも、わらえない……これでも、にんげん?」
「……ああ。大丈夫。すぐに小室さんは人間に戻れるよ」
そんな小室さんを見ていると、俺はだんだんと悲しくなってきてしまった。
ゾンビ病という不可思議な現象は、こんな可愛い美少女に、こんなにも大きな悲しみを背負わせているのだ。
だから、上手く笑えない小室さんに、俺はただ、そんな気休め程度の言葉をかけてあげることしかできなかった。
「あかい、くん」
「ん? 何? 小室さん」
「……ありがと」
小室さんは小さな声でそう言った。
俺はただ小室さんが言ったその言葉に、笑顔で返すことしかできないのだった。




