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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター3
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ゾンビ少女の憂鬱 7

 小室さんが人間でないとすれば、俺は一体今何と会話しているんだ?


 こんな風に意思の疎通は、ゾンビなんかにはできやしない。


 人間にしか、こんな会話、コミュニケーションはすることができない。


 だから、俺は小室さんは人間だと思う。


 というか、人間と思いたかった。


「ね? だから、その……今はちょっと調子が悪いだけなんだ。そんな時はさ、遠慮せずに助けを求めていいんだよ」


 俺がそう言い終わると、小室さんはキョトンとした表情で俺を見ていた。


 そして、しばらくしてから俺から再び目を反らし、俯いた。


 しばらく沈黙が続いたかと思うと、小室さんが顔を上げた。


「うれしい」


「え?」


 そう言いながら小室さんは目を細めていた。しかし、その口元は笑っていなかった。


 というか、どうやら口元の筋肉も固まってしまっているのか、うまく笑えないようである。


「わたし、うれしい。でも、わらえない……これでも、にんげん?」


「……ああ。大丈夫。すぐに小室さんは人間に戻れるよ」


 そんな小室さんを見ていると、俺はだんだんと悲しくなってきてしまった。


 ゾンビ病という不可思議な現象は、こんな可愛い美少女に、こんなにも大きな悲しみを背負わせているのだ。


 だから、上手く笑えない小室さんに、俺はただ、そんな気休め程度の言葉をかけてあげることしかできなかった。


「あかい、くん」


「ん? 何? 小室さん」


「……ありがと」


 小室さんは小さな声でそう言った。


 俺はただ小室さんが言ったその言葉に、笑顔で返すことしかできないのだった。

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