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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター29
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学園崩壊 3

 そして、俺たちは一階へと向かうことにした。


 既に学校の中では悲鳴や怒号が響いている……おそらく、状況は最悪だ。


 だが、ここにいても状況は好転しない……一刻も早く外に出る必要がある。


「……なぁ、赤井」


 と、僕の後ろを歩いていた紫藤さんが僕に話しかける。


「何? 紫藤さん」


「……もし、あの爆発がバスの爆発で……バスが爆発したってことは、ここからの脱出手段は……あの先公の車だけか?」


 そう言われて僕も同じことに気づく。


 つまり……もし、平野さんに、先に椿先生の車を奪われてしまうと……その時点で、俺たちのこの場所からの脱出は相当難しくなるということだ。


「……とにかく、急ごう」


 爆発音が聞こえてからまだ5分程度……運が良ければまだ平野さんは学校の敷地内にいる。


 俺たちはそんな一縷の望みにかけて、一階への階段を駆け下りる。


「うっ……酷いですね……」


 そして、一階に着いた時、古谷さんがそう言った。俺も同意見だった。


 やはりバリケードは破られてしまっていたらしい。廊下にはゾンビがうろついているし、おまけに至る所に血痕が染み付いている。


「う、嘘よ……あはは……こんなの夢……」


 黒上さんが情けない声でそう言う。


「仕方ねぇ……とにかく、強行突破するぞ!」


 紫藤さんがそういうのと共に、僕達は動き出した。


 武器として持ってきたのは、掃除用のモップ程度……だが、幸いなことに多くのゾンビたちは「食事中」で、僕達の存在に気づかなかった。


「……ひどい」


 悲しそうな調子で小室さんがそう言う。俺もさすがに応えるものがあった。


「……おい……おい、黒上!」


 紫藤さんがあらっぽい声で黒上さんを呼ぶ。


 すると、我に返った黒上さんは紫藤さんの方を見る。


「え……な、なんですか?」


 すっかり怯えた調子で黒上さんは訊ね返す。


「緊急出口ってのは、要は非常口なんだよな?」


「そ、そうですけど……な、なんで?」


「だから……どっちなんだよ? 非常口は」


 そう言われて黒上さんは怯えながらも先を続ける。


「あ……お、お仕置き部屋の近く……」


「お仕置き……あそこか」


 それを聞いて、俺たちはかつて椿先生と対峙したあの教室の方向に向かう。


 途中、紫藤さんが襲ってこおうとしたゾンビをモップで何度か撃退し、危険を冒しながらも、なんとかあの教室の近くまでやってこれた。


「……なるほど。ここのバリケードが壊れたのか」


 実際、他の教室よりも教室の中にいるゾンビの数が多いようである。


 そして、廊下の向こうには非常口も確認できた。どうやら、嘘ではなかったようである。


「よし、じゃあ、さっさと出ようぜ」


「あ……ま、待って!」


 と、いきなり黒上さんが声を上げた。そして、前方を指差す。


「あ……あれ……川本よね……?」


 嬉しそうにそういう黒上さんの指が指し示す先には……確かに見覚えのある背格好の少女のシルエットがあった。


「な……なんであそこに?」


「……あかいくん。あれ……もうだめ」


 と、小室さんが悲しそうに調子でそう言ったことで俺は全てを理解した。


「川本! 私よ! は、早く逃げましょう!」


「あ、おい! 馬鹿!」


 紫藤さんがそういうよりも早く、黒上さんは川本さんに近寄っていった。


「川本……心配したのよ、私だけ一人で……」


 すぐ近くで黒上さんがそう言っても……川本は反応しない。


「か、川本……?」


 それどころか、川本はいきなり大きく右手を振り上げた。


 その手には……血まみれの刀が握られている。


「あ……危ない!」


 俺は思わず反射的に飛び出してしまった。そして、そのまま突き飛ばすレベルで黒上さんに体当りする。


 体当たりした後に、カキン、と刀が廊下に振り下ろされる音が聞こえる。


「え……か、川本……?」


 俺がなんとか突き飛ばした黒上さんは、信じられないという顔で川本を見る。


 俺もそのままようやく川本の方を見る。


 その顔は……以前の凛としたものではなかった。


 血走った目は大きく見開かれ、口元には妖しげな半笑いが浮かんでいる。


「カ……カイチョウ……オシタイイタシテオリマス……ダカラ……コロサセテ……クダサイ……!」

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