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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター29
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学園崩壊 2

「とにかく……状況を把握しないと」


 俺は小室さんの手を掴んだままで全力で走る。その後ろを必死に黒上さんが走ってついてきている。


「そ、そんなこと……わかりきっているわよ!」


 と、背後から黒上が大声で叫んだ。


「え? どういうこと?」


「アイツが……裏切ったのよ!」


 黒上はそう言って、立ち止まる。俺も小室さんも思わず立ち止まってしまった。


「裏切った……じゃあ、この爆発は……でも……」


 爆発……爆弾というと、イメージするのは谷内だ。しかし、谷内は既に自分で自分の命を断っている……


「……もしかして、平野さんは谷内の爆弾のスイッチを?」


 俺は思わずそう言っていた。もしそうだとするならば……


「私も確実なことは言えないけど……平野だったら、あり得るわ」


 黒上も不安そうな表情でそう言う。つまり、この爆発は……


「平野さんが引き起こしている……ってことか」


 そうなると……心配なのは、紫藤さんと古谷さんだ。


 平野さんに何かされてなければいいが……とにかく、急いだ方がいいようである。


 俺は今一度小室さんの手をつかみ、そのまま走り出す。


「あ! だ、だから! 置いてかないで!」


 黒上が半泣きになりながら俺と小室さんの後を追ってくる。階段を転がるように駆けて、なんとか僕と小室さんは古谷さんと紫藤さんと別れた教室にやってきた。


「古谷さん! 紫藤さん!」


 教室には……生徒は二人しかいなかった。そしてその二人こそが……


「遅いぞ。赤井」


 紫藤さんがニヤリと微笑む。


「もう……心配したんですよ? もしかして、もう食べられちゃったのかと」


 古谷さんもいつものようにそう言ってくれる……そのセリフを聞いて、僕は二人のもとへ帰ってこられたのだと実感した。


「よかった……他の生徒は?」


「ああ。勝手に逃げちまったぜ。ったく……こういう時は慌てず騒がずって、知らないのかねぇ」


 紫藤さんが呆れたようにそう言う。最も、こんな状況で落ち着いていられる俺や紫藤さん、そして、古谷さんや小室さんの方が不思議な存在なのだが。


「あ、アナタ達……どうして落ち着いていられるの……」


 と、正常な反応をするのは……俺と小室さんについてきた黒上さんだった。


「……おい。なんでコイツ、いるんだ?」


 紫藤さんが至極不機嫌そうにそう言う。


「あー……付いてきちゃって……」


「はぁ? ったく……おい」


 紫藤さんにそう呼ばれると、黒上さんは怯えた様子で銃を構える。


「な……何よ……」


「お前、知っているんだろ? こういう時の非常口」


「え……?」


「おいおい。知らないとは言わせねぇぞ。知ってんだよなぁ?」


 まるで恐喝と言わんばかりの態度で紫藤さんはそういう。黒上さんは完全におびえてしまって、震えながらもなんとか返事する。


「あ……し、知っているわ……で、でも……そ、それは……無理よ」


「あ? なんでだよ?」


「だ、だって……緊急時には……あ、アイツらを囮にして一階から出るって考えていたから……」


 囮……それを聞いて僕はピンと来る。


「……もしかして、ジャージ組を囮にして外に出る方法、ってこと?」


 俺がそう言うと意外そうな顔で黒上さんは頷く。


「……その方法、考えたのは?」


「え……あ、アイツが言ってたのよ……」


 俺は思わず大きくため息を付いてしまった。


「どうやら、あのひと、ほんとの、くろまく」


 小室さんも俺と同様の考えに至ったらしい……どうやら、平野さんは最初から、ジャージ組だけでなく、俺達や黒上さん達のことまで利用して、この学園から脱出する気だったらしい。


「おいおい。どうするんだよ、赤井」


「そうです……あの爆発の規模からするとバリケードは崩壊……ゾンビが中に入ってきてるかも……」


 紫藤さんも古谷さんも不安そうにそう言う。


 しかし、おそらくこの学園から出る方法は一つしかない……それに、ジャージ組や椿先生がどうしているかは、俺も気になっていた。


「……行こう。その緊急出口とやらに」


「えぇ!? む、無理よ! だって、出口は一階よ? バリケードが破られていたとすると……」


 青い顔でそう言う黒上さん。


「でも……そこしかないんでしょ? 出られる場所」


 俺がそう言うと、黒上さんは小さく頷いた。


「俺は行くけど……小室さんや紫藤さん、古谷さんは?」


 俺がそう訊ねると当たり前だと言わんばかりに大きく頷く三人。


「よし……じゃあ、行こう」


 俺たちは歩き出した。黒上さんはというと……


「あ……ま、待ちなさい! 置いてかないでって言っているでしょ!」


 情けない泣き声を発しながら、俺たちに結局付いてくることにしたようなのであった。

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