ジャージ組の戦い 8
「なっ……なんで……」
紫藤さんは口から血を流しながら、苦しそうにしている。
「紫藤さん!」
俺が叫ぶと同時に、川本は得意気に微笑んだ。
「ふっ……これが貴様と私の違いだ。私はゾンビになったのではない。新たな人類として進化したのだ。そして、その力は、我が会長閣下のためにこそ使われるべき力で――痛いっ!」
川本が話しているその際中だった。
紫藤さんはなんと刀が胸に突き刺さったままで、そのまま川本の腕を掴み、そこに噛み付いたのだった。
「き、貴様!」
川本はその瞬間、紫藤さんの胸から刀を引き抜き、そのまま思いっきり紫藤さんを蹴り飛ばした。
「紫藤さん!」
俺は蹴り飛ばされた紫藤さんに駆け寄った。胸からは血が流れている。
「大丈夫!? 紫藤さん」
俺が呼びかけると、紫藤さんは苦しそうにしながらも、俺に笑顔を見せる。
「へっ……俺は転んでもタダでは起きないんでね……アイツに、一発かましてやったぜ……!」
紫藤さんらしい……俺は思わず笑ってしまった。
しかし、状況は笑えない状態であった。
「き、貴様……私の身体に傷をつけるなど……!」
声がした方を振り返ってみると、川本が怒りの形相で刀を握りしめている。
「あ……ちょ、ちょっと待って! もう勝負は着いたよ!」
俺が慌てて言っても、川本はまるで興奮した獣のように、俺達を睨んでいる。
「ゾンビといえど……首を切れば死ぬ……そこにいる人間と一緒に叩ききってやる!」
そういって川本は刀を振り上げた。俺はあまりのことに物事を認識できていなかったが、今度こそ、死んだ、と思った。
その時だった。
「おーい、何やってんだ?」
と、階段の方から聞き覚えのある声がした。
「……平野」
川本が刀を下げる。俺と紫藤さんも同時にそちらを見る。
「なんだ? 喧嘩か? ダメだぞ。学校内での喧嘩は」
相変わらずの間延びした調子で顕れたのは、白衣を着た平野さんであった。




