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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター28
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ジャージ組の戦い 5

「え……そ、そんなことできるわけないでしょ……」


 俺がそう言っても、椿先生はニヤニヤしているだけである。


「そんなことないわ。皆こんな状況なら自分の命が一番ですもの……特に、君たちのような学生は仕方ないことなの……私は先生だから君たちを守る義務があるけど……ね? だから、そっちのゾンビの子を渡して頂戴?」


 椿先生は完全に理論が破綻したことを言う。もちろん、紫藤さんを渡すつもりはない。


「……渡さないと……どうするんですか?」


 俺は思わず訊いてしまった。すると、椿先生はチェーンソーで手近にあった机を真っ二つにする。


「まぁ、こうするわね。危険な存在は抹消しないと。それが、教師である私の御仕事だから」


 そういって椿先生は焦点の合っていない瞳で俺たちを見ている。なんとなくだが、この人は宮本さんと同じようなタイプでということがわかった。


 でも、宮本さんほど壊れてしまってはいない……なぜなら、壊れてしまっていれば、とっくに俺たちをチェーンソーで切り刻んでいるはずだ。


 だとすれば……説得の余地はある。


「……嫌です」


 俺ははっきりとそう言った。すると、椿先生はキョトンとした顔で俺を見る。


「何を言っているの? そのゾンビの子を差し出せば助けてあげるって言っているのよ? それなのに……なんで?」


「……紫藤さんはゾンビじゃありません。人間です」


 俺がはっきりとそう言うと、椿先生は少し動揺したようだった。


「な、なんで? なんでそんなこと言うの? 人間? 違うわ。その子はゾンビよ……」


「違います。意識ははっきりしているし、言葉も理解できる……それはまぎれもなく、人間なんです」


「そんな……だったら、今まで私がしてきたことは? ここで、そういう子達もお掃除してきちゃったのよ? それじゃ……」


 ……あれ? なんだか不味い方向に話が進んできている。


 椿先生は両目から涙を流しながら、チェーンソーを振り回す。


「それじゃあ……私がやってきたことは何なの? 私は……生徒を……」


「つ、椿先生、落ち着いて下さい!」


 すると、椿先生の動きがピタリと止まった。そして、ゆらりと不穏な動きをしながら、こちらを見る。


「……最後の警告よ。そのゾンビの子を見捨てなさい」


「え……そ、そんなことできません!」


「……わかったわ! アナタもゾンビになっているのね! いいわ! アナタごと、お掃除してあげる!」


 そういって椿先生はそのまま俺の方に突っ込んできた。


「あ、赤井!」


 紫藤さんの叫び声が聞こえる。


 でも、ここで動いたら紫藤さんがチェーンソーで切られてしまう……


 そう考えている内に、目の前にはチェーンソーを大きく振りかぶった椿先生が迫ってきていたのだった。

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