ジャージ組の戦い 4
「え……ちょ、な、なにこれ……」
俺と紫藤さんは完全に戸惑っていた。
しかし、椿先生はチェーンソーをもったままでこちらに少しずつ近づいてくる。
「え……冗談ですよね? 先生」
「冗談? フフッ。そんなわけないじゃない。私は教師……生徒を守る存在よ。アナタ達のような感染しているかもしれない部外者を置いておくわけには行かないわ」
「はぁ? な、何言ってんだこいつ……お、おい! 開けろ!」
紫藤さんが扉を叩く。しかし、鍵をかけられたのか、扉はびくともしない。
「無駄よ……言ったでしょう? ここはお掃除部屋……アナタ達のような危険な存在を……お掃除する部屋なのよ!」
そういって椿先生はいきなりチェーンソーを振り上げてきた。俺と紫藤さんは思わずそのまま逃げ出す。
チェーンソーは俺たちが逃げた所にあった机をそのままの勢いで真っ二つにした。
「う、嘘だろ……」
紫藤さんが怯えた瞳で俺を見る。ダメだ……ここは俺がしっかりしなければ。
「つ、椿先生! やめてください! 俺達は感染していません!」
すると、椿先生はキョトンとした顔で俺たちを見る。
「フフッ……アハ……アハハハハハハッ!」
すると、急に狂ったように笑い出した。正直、俺自身も、結構この状況はきついものがあった。
「何を言っているの? アナタはそうかもしれないけど……隣の子はゾンビじゃない」
そういって椿先生は紫藤さんを指さす。どうやら、既にわかっていたようである。
「……でも、紫藤さんは俺たちを襲ったりしません」
「ええ。知っているわよ。そういう子だって何人かいたから……でも、危険なのよ。危険は生徒たちのためには取り除かなきゃ……今まで全部私が取り除いてきた……だから、もう後戻りなんてできないのよ!」
そう言うと、そのまま椿先生はこっちに突っ込んでくる。紫藤さんは完全に腰を抜かしてしまっているようで、動けないようだった。
「紫藤さん!」
俺は無理やり手をひいて、そのまま紫藤さんを引っ張った。
すると、俺達が今までいた場所の背後の壁にチェーンソーの刃が容赦なく突き刺さる。この部屋がボロボロだった理由は、椿先生だということが理解できた。
「……はぁ。あんまり逃げられると、面倒なのよね」
すると、椿先生はなにかを思いついたようにニンマリと微笑んだ。
「そうだ……ゾンビじゃない方のアナタ。助かりたいわよね?」
「え……な、何言っているんですか?」
「フフッ……だから、もし、そっちのゾンビの子を差し出してくれるんなら、アナタだけ助けてあげるって言っているのよ」
その言葉を聞いて、紫藤さんは怯えた様子で俺のことを見たのだった。




