ジャージ組の戦い 3
「な、なんだよ、この教室……」
先ほどまでの威勢はどこに行ってしまったのか、紫藤さんは怯えた様子で俺の腕にしがみついている。
「ここはねぇ……お掃除教室よ。ほら。こんなに汚れちゃっているでしょ? いくら掃除しても汚れちゃうから定期的にお掃除しているのよ」
先ほどまでのテンションと打って変わって、低い調子で椿先生はそう言った。
「え、えっと……この教室大丈夫なんですか? 窓ガラスとかも割れちゃってますけど……」
思わず俺がそう訊ねると、椿先生はなぜかニッコリと微笑む。
「ええ。そのためのお掃除教室ですもの」
その答えには意味がわからなかったが、俺はなんとなくものすごく嫌な予感がした。
「な、なぁ、赤井……こんな教室さっさと出ようぜ。気味が悪い……」
相変らずこういう系は紫藤さんはダメみたいである。
「そ、そうだね……えっと、椿先生、ちょっとこの教室は……」
カチャッ。
と、俺と紫藤さんが教室から出ようとした時だった。
いつのまにか閉められていた扉に、鍵がかかる音がしたのである。
「え……な、何?」
俺は扉を開けようとする。しかし、教室の扉は完全に閉まっていて、開く気配はない。
「お、おい! 角田か? てめぇ、なんのつもりだよ!?」
紫藤さんが叫んでも、扉が開く気配はない。
「え……角田?」
「……すまない。許してくれ」
扉の向こうから角田の済まなそうな声聞こえて来た。
其の瞬間だった。
ブォォン! と、まるで車のエンジンが勢い良くかかるような音が聞こえて来た。
教室の中で何の音だ、と思ったが……その音は
「え……?」
俺と紫藤さんは振り返る。
「さぁ……お掃除……しましょうね♪」
振り返った先にいたのは、けたたましい音を立てながら起動している園芸用のチェーンソーを手にした椿先生であった。




