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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター27
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学校行きのバス 4

 それから十五分程経っただろうか。


「あ」


 と、小室さんの声で俺達はその建物を発見した。


 俺も見たことの在る形の建物……というか、よくある学校の校舎だった。


 俺の学校とは違い、大きな校舎だ。おそらく大勢の生徒があの学校にいた……と思われる。


「あれが……がっこう……」


 と、小室さんがボソッと呟く。


 学校……この非日常の中で、なんだか特異な存在に思える建造物だった。


「ヒヒッ……ようこそ、我が学校へ」


 と、なぜか谷内はニヤニヤしながらそういった。最初は不気味な子だと思ったが……なんだか単純に怖い雰囲気を醸し出そうとしているだけのような気がしてきた。


「ほら。裏口から入るぞ。もうすぐつくから準備しろ」


 そういって、平野さんはバスを校舎裏へと向かわせた。


「え……どうして正門から入らないんですか?」


 俺が訊ねると、平野さんは口の端を歪めて笑う。


「正門から入ると、校庭にいる『生徒達』の熱烈な歓迎を受けることになるが……それでもいいのか?」


 その言い方でなんとなく校庭がどんな状態になっているかは想像がついた。だから正門から入れないのだということも。


 そして、そのまま裏口から入ったバスは、校舎の裏口に面接する道路に停車した。


「……よし。じゃあ、降りろ」


 平野さんがそう言ってバスのドアを開ける。


「よし……全員……降車」


 谷内がそう言うと共に、俺達の後ろの席にいたジャージ姿達が立ち上がり、バスから降りていった。


 そして、全員が降りたのを見計らってから、谷内が俺達に銃口を向ける。


「さぁ、降りろ」


「ちょっと待った」


 と、谷内がそう言った途端、平野さんが口を開いた。


「……なんだ。平野」


「平野、じゃない。平野先生、だ。悪いが、この子たちに私は興味がある。少し話したいことがあるから、谷内、お前が先に降りろ」


 平野さんがそう言うと谷内はイラ付いたように平野さんを睨みつける。しかし、平野さんは動揺する素振りを見せなかった。


「……調子に乗るな。この……」


「……いいのか。確かに、3人は感染者であることは間違いない。しかし、赤井君だけはどうだろう。判定が微妙だ。せめて学校に入る前に確認しておきたいんだ」


 平野さんが落ち着いた様子でそう言うと、谷内は何も言い返せないようだった。


「……勝手にしろ」


 不機嫌そうにそう言うと、谷内はバスから降りた。


「やれやれ……これだからガキは嫌いなんだ」


 そう言うと、平野さんは白衣のポケットからタバコを取り出し、ライターで火を付けた。


「さて……診断を始めるとするか」


 大きく煙を吐き出し、ニヤリと笑って平野さんはそう言った。

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