学校行きのバス 2
「さぁ……早く乗れ」
白衣の女の子に言われるまま、俺達四人はバスに押し込められた。
「……ん? なんだ。新しい子か」
と、バスの運転席にいた人が俺達を見て口を開いた。
見ると、先程の女の子同様に白衣を着ているが、こちらは綺麗な白衣の女の人だった。
おまけに髪の毛も長く綺麗だ。
ただ、眼鏡の下の眼にははっきりと分かるくらいに濃いクマがあった。
見た目的には宮本さんと同年齢くらいの人に見えるが、宮本さんと違って大人の女性という感じがした。
「あ……ど、どうも」
「ふむ……君は、人間か。お。後の子は全員ゾンビか。珍しいな」
なぜか嬉しそうにそういう白衣の女の人。
小室さん、紫藤さん、そして、古谷さんも困惑したように顔を見合わせる。
「フフッ。なぁに、心配するな。私は、平野アサミ。事情があって、今は学校の保健医とかバスの運転手とか……まぁ、色んな雑用をやらされている。しかし、本業は医者だ」
「え……医者?」
その時、夕樹さんの言ったことを俺は思い出した。
この状況を打開する手がかり……もしかして、この平野とかいう人がその鍵を握っているんじゃなないのか?
「おい……いつまで喋っている。さっさと、座れ」
そういって先程の白衣の女の子が俺に銃を向けてきた。
すると、平野さんはプッとなぜかおかしそうに吹き出した。
「なっ……お、おい! なぜ笑う!」
顔を真っ赤にして白衣の女の子は平野さんに食って掛かった。しかし、平野さんは何喰わぬ顔でヘラヘラと笑っている。
「え? ああ……すまん。そんな玩具の銃で脅されているのもなんだかなぁ、って思ってね」
「え……おもちゃ?」
思わず俺は驚いてそう言ってしまった。白衣の女の子はいらだたしそうに平野さんを見ている。
「ああ……だが、平野。お前の脳天を……撃ちぬくことが出来るおもちゃだぞ」
女の子は精一杯低い声でそういって、銃口を平野さんに向ける。しかし、平野さんは相変らず平気そうだった。
「ああ。そうだな。違法に威力を強度したエアガン……まさかそんな危険なものが役に立つ世界になってしまうとはねぇ……」
なぜか人事のようにそういう平野さん。なんだか掴み所のない人だなぁ、と俺は思った。
「……お前と話していると、調子が狂う」
白衣の女の子も同様だったのか、そういって俺達四人が座っているバスの前方の席の近くに座った。
俺達が座ると、ジャージ姿の集団は俺達の後方に座ることになった。
そして、全員が乗り込むと、扉が閉まる。
「よし。それじゃ、出発」
平野さんがそう言うとバスはエンジンを震わせて、ゆっくりと動き出した。
目の前のデパートがゆっくりと後方に下がっていく。
俺達四人は、半ば強制的にではあったが、デパートから脱出したのであった。




