学校行きのバス 1
「ゆ、夕樹さん……」
「……頭を撃ちぬいた……ソイツは当分、動けない……」
ビクビクと痙攣している夕樹さんの身体を見ながら、白衣の女の子は嬉しそうにそう言った。
「……君は、一体なんだ?」
俺がそう訊ねると、女の子はニタニタと笑いながら俺と小室さん、そして、古谷さんと紫藤さんを見た。
「……面白い……特異な事例だ……副会長以外にこういう事例が存在するとは……」
すると、白衣の女の子は物珍しそうに小室さん、古谷さん、そして、紫藤さんを見た。
「……おい! てめぇ、一体なんなんだよ! どこから来た!?」
紫藤さんがドスの聞いた声でそう叫ぶと、ジャージの男女はビクッと反応する。白衣の女の子だけが気だるそうに紫藤さんを見た。
「……粋がるな。君達は、我々が保護する……そこの女のように頭を撃ちぬかれたくなければ我々について来い」
そういって女の子は銃をまた構える。さすがの紫藤さんも銃の前にはあまり大胆な行動には出られないようである。
「……わかりました。従いましょう」
と、古谷さんが素直にそういった。俺達3人は思わず古谷さんを見る。
「え……古谷さん。付いて行くの?」
「ええ。だって、元から私達はデパートから出ようと思っていたのですよ。問題ないはずです」
古谷さんの言葉に、俺は確かにそうだと納得してしまった。
しかし、果たしてこの集団についていって大丈夫なものなんだろうか……
「……よし。付いて来い……妙な行動は……するなよ」
俺達は言われるままに白衣の女の子とジャージの集団に付いて行くことにした。
「……なぁ? 本当に大丈夫なのか?」
紫藤さんが歩きながら俺に耳打ちする。
「……まぁ、古谷さんの言うとおりだ。それに、この人達が何者なのか、気になるしね」
そういってから、俺は小室さんの耳に口元を近づける。
「……ちなみに、ジャージの集団は全員人間?」
「……うん。ぞんび、いない。あの、はくいのこも、にんげん」
小室さんの言葉を信じると、どうやら、やはりこの集団は生存者の集団らしい。
「……ということは、やっぱり……」
そうこう考えている内に、いつのまにかデパートの外に出ていた。
「……え?」
と、見ると、いつのまにかデパートの前には大きなバスが止まっていたのである。テレビを見ていたから気づかなかったのか……さすがに俺はあまりにも油断しすぎていたようである。
「えっと……これに、乗るの?」
俺が思わず白衣の女の子に訊ねると、女の子はまたしてもニヤリと気持ち悪く微笑んだ。
「……ああ。これが『学校』行きのバスだからな」




