突如の異変 1
それから一週程、俺達はデパート暮らしをすることになった。
探してみればデパートにはカップラーメンや冷凍食品なんかが残っていて、勝手に商品である電子レンジや電気ポッドを使って調理をしていた。
そして、俺はその日もぼんやりとテレビを眺めていた。
既に幾つかのチャンネルでは放送が行なわれていない。
かつてこの状況下であってもアニメを放送していたチャンネルも、ついにニュース速報しかやらなくなってしまった。
「……はぁ」
しかも、そのニュースも特に変化はないものだ。
ゾンビ病に対するワクチンは未だに作成されていないようだし、事態の打開も期待できそうにないようである。
「無駄なことしてるんだね、ドーテー君」
と、家電コーナーでやっているテレビを眺めている俺の近くにふらりとやってきたのは、珍しいことに夕樹さんだった。
「あ……あはは、一応、情報収集をね」
「……テレビが付いているってことは、まだ電気は通っていること……そして、ニュースをやっているってことは、政府やマスコミといった機関は機能しているってこと」
夕樹さんはつまらなそうにぼんやりとそうつぶやいていた。
「……中途半端な状況よね」
「え? 中途半端?」
「そう。だって、完全に世界は崩壊したわけじゃないし……もしかするとちょっと頑張れば私達も安全な場所に行くことが出来るかもしれない……」
そういって夕樹さんは俺を見る。俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「……学校にいるその先生は、安全な場所を知っているの?」
俺がそれを訊くと、夕樹さんはニヤリと妖艶に微笑んだ。
「さぁ? それらしい話は聞いていたけど……確かなことは言えないでしょ」
そういって夕樹さんは立ち上がった。
「ただ……電気や水道が通っている内になんとかこの状況を打開した方がいいんじゃない?」
そういって手を振って夕樹さんは行ってしまった。
確かにそうだ……もし、これで電気や水道が止まってしまったら、益々危機的な状況になる。
「俺はどうすれば……」
「赤井!」
と、そこへ大きな声が聞こえて来た。俺は慌てて振り返る。
そこには血相を変えて走ってくる紫藤さんと古谷さんの姿があった。
「え……ど、どうしたの?」
「た、大変です! ひ、人が……人がたくさん来たんですよ!」
いつもは冷静な古谷さんでも取り乱している。
直感的だったが……俺は、この時嫌なことが起こると感じたのだった。




