一時の安全
「……へぇ。ここに残るんだ」
「ああ、暫くの間だけどね」
俺達四人は、夕樹さんのもとに戻り、デパートに残ることを宣言した。
夕樹さんは俺達四人をジロジロと見つめた後で、わざとらしく大きくため息をつく。
「まったく……これだからドーテー君は……でも、確かに良い判断ね。どうせ、遅かれ早かれ学校の奴等とは会うことになると思うわ」
「え? そ、そうなの?」
「ええ。まぁ、せいぜい楽しみにしておくといいわ」
そういって夕樹さんは俺達に背を向ける。
「ほら、さっさと縛っている縄を解きなさいよ」
と、そう言われて俺達はそれまでずっと夕樹さんの腕を縄で縛っていたことをようやく思い出した。
「え、えっと……解いちゃって大丈夫かな?」
俺は古谷さんと紫藤さん、そして、小室さんに訊ねる。
「……私は反対ですが、かといってずっとこのままというのも……」
「ああ、俺もそう思うぜ。それに、コイツはさすがにもう赤井を食おうと思わないだろ」
そういって紫藤さんがキッと夕樹さんを睨みつける。
「ええ。もうドーテー君なんて食べたくないわ。だから、さっさと解いてちょうだい」
俺は苦笑いしながら、言われるままに縄を解くことにした。
縄を解くと夕樹さんは思いっきり伸びをして立ち上がった。
「さて……じゃあ、私はこれまで通り勝手にやらせてもらうわ。アンタ達も勝手にやりなさいね」
そういって夕樹さんは俺達に背を向けてそのまま行ってしまった。
「何だアイツ……勝手な奴だな」
紫藤さんが忌々しげにそう言うが、確かに夕樹さんからしてみれば、俺達は勝手にここにやってきただけなのだ。共に行動する必要もないわけである。
「……よし。とにかくまぁ、一応安全は確保されたみたいだし……ご飯でも食べる?」
俺がそう言うと3人の女の子たちはニッコリと微笑んで同意したのだった。




