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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター25
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冷静な臆病者

「えっと……俺としては、この状況を打開する鍵があるのなら……それに賭けるべきなのかもしれない、って思う」


 俺がそういうと小室さん、古谷さん、紫藤さんは黙ったままで俺を見た。


「もしかすると、夕樹さんが言っていることは嘘かもしれない。当初の目的通り、このデパートで過ごす方が、どう考えても安全だと思う」


「……ということは?」


 古谷さんがそう言って俺の事を見る。


 俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまった。


「えっと……ということで……しばらくは、このデパートにいたほうがいいと思うんだよね……」


 俺は苦笑いしながら、そう言ってしまった。


 ……敢えて、常識に逆らってみたのだ。


 確かに、ゾンビ映画なんかだと、どう考えてもこの展開だと、次なる目的地に進んでしまう。


 でも、そういう時は、たいがいロクでもない……つまり、面倒くさい事態に遭遇するのである。


 それを考えれば、このデパートにもう少しの間いた方が安全だし、確実だ。


 食料だってあるし、電気だってまだ通っている。


 少なくとも後数日は、デパートで世界の変化を確認した方がいい。


 俺はそう考えたのだった。


「はぁ……ったく、赤井……お前ってやつは……」


 最初に口を開いたのは、紫藤さんだった。


「え……やっぱり、ダメ……かな?」


「いいえ。むしろ、安心しました。赤井君、やはり赤井君は冷静ですね」


「え……古谷さん?」


 古谷さんはなぜか満足そうに微笑んでいた。


「ここで、勢いだけで学校なんかに行くと言い出していたら、夕樹さんとの件も含めて、赤井君との付き合い方を考えようと思っていましたが……大丈夫なようですね」


「古谷さん……」


 俺は思わず安心してしまった。


「今の選択で、私も紫藤さんも、夕樹さんの件は水に流します。まぁ、私は別にそんなに赤井君のこと、怒ってなかったんですけどね」


 そういって古谷さんは紫藤さんのことを見た。


「はぁ? さっき赤井がいなくなった後『言い過ぎたでしょうか……』って深刻に言っていたのはどこのどいつだよ!」


「う、うるさいですね!」


 そういって紫藤さんと古谷さんはまたしてもにらみ合い始めた。俺は思わず笑ってしまう。


「あかいくん、よい、せんたく」


「あ……小室さん」


 小室さんにそう言われて俺は本当に安心してしまった。


 もちろん、ずっとデパートに居る気はない。


 それでも、なんとなく皆の反応を見ていると、なんとか正しい選択ができたのだ、と実感したのだった。

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