優柔不断の代価 3
俺はそのまま小室さんの所ヘ行くことにした。
それにしても……夕樹さんと2人だけにしてしまっていて、大丈夫なのだろうか。
今更ながら俺は心配になってきて、向かう足も少し早くなる。
エスカレーターを駆け上がり、そのまま先ほど夕樹さんと捕らえておいた場所へと向かった。
「え!? アンタ、それマジで言っているわけ!?」
と、いきなりなぜか大きな声が聞こえて来た。
この声……夕樹さんのものである。
俺は先ほどまで急いでいた足にブレーキをかけ、ゆっくりと、近づくことにした。
「まじ……そう。しんけん。わたし、しんけんにそういっている」
もう一人の声……聞こえて来たのは小室さんの声だ。
いつもとおりの無機質で単調な話し方である。
「あのねぇ……アンタ、それはさすがに言った方がいいわよ」
どうやら夕樹さんと小室さんはなにかを話しているらしい。
何を話しているのかはわからなかったが。
「いったほうがいいって……いわれても、わたし、こまる」
「アンタが言わないならアイツには私が言ってあげるわよ。だって、それって可笑しいわよ。キチンとはっきりさせたほうがいいに決まっているじゃない」
なんだか小室さんが夕樹さんに怒られているようである。
それにしてもアイツというのは、もしかして……俺のことだろうか?
「……でも、あまりあかいくん、こまらせたくない」
「困らせるとかそういう問題じゃないの。アンタも含めて、アンタ達はあのドーテー君を甘やかしすぎているのよ。ここらへんでビシっと言わないと」
ドーテー君……やっぱり俺のことのようである。
俺は今度はゆっくりと小室さんと夕樹さんの方に近づいていった。
「……そこで覗き見ているドーテー。わかってんのよ?」
と、いきなり夕樹さんがこちらを振り返って俺を観る。
いきなりのことに俺はその場で動きを止めてしまった。
「え……な……なんで?」
俺が困惑していると、夕樹さんは得意げな顔で俺を観る。
「フンッ。私は自分の体温を変化させることもできる上、周囲の生物の体温も感知できるのよ。もっとも、それは体温変化のある人間限定で、ゾンビの気配は察知できないんだけどね」
「あ……だから、紫藤さんのことをわからなかったのか……」
「そうよ。それより……アンタちょっとこっちに来なさい」
そういって、夕樹さんは俺のことを手招きする。
一緒にする小室さんも不思議そうに俺のことを見ていた。
俺は仕方なく夕樹さんと小室さんに近づいていったのだった。




