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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター25
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優柔不断の代価 1

「……はぁ」


 その後、俺は1人でデパートの階段に座り込んでいた。


 今更になってだが、自分自身がしたことがなんと愚かなことか、わかってきたのである。


 もっとも、後悔先に立たずという言葉の通り、俺自身、自分があまりにも愚かすぎて自己嫌悪に陥っていたが……


「おい」


 と、俺がそんな風にしていると、頭の上から声が聞こえて来た。


「なにやってんだよ。そんな所で」


 顔を上げると、紫藤さんと古谷さんが二人で俺のことを見ていた。


「あ……いや、なんでもないよ」


「……なんでもないはないでしょう」


 そう言って2人は俺の隣に腰を下ろす。


 しばらく二人共、口を開かなかった。無論、俺自身も2人には何も話しかけることができなかった。


「あー……赤井さぁ。その……」


 先に口を開いたのは紫藤さんだった。


「……何、紫藤さん」


「その……なんというか……すまなかった」


「……なんで、謝るのさ」


「え? いや、だって……俺達はその……」


 紫藤さんが困り顔で古谷さんを見る。古谷さんは呆れた様子で俺のことを見ていた。


「赤井君……どうして、私達の言うこと、聞いてくれなかったんですか?」


 古谷さんは落ち着いた様子でそう訊ねて来た。


 俺はその顔をまっすぐ見ることが出来なかった。


「赤井君」


「……宮本さんを、思い出したんだ」


「……え?」


 情けないと思いながらも、俺は素直に本音を古谷さんに言った。


「……俺は、本当に夕樹さんが人間だと思った……それで、みんなの事怖いって言っていたし……だから、宮本さんのことを思い出したんだ……」


「……それで、あの子のことを、今度は守ろう、って思ったんですか?」


 古谷さんの問いかけに、俺はゆっくりと頷いた。


「……そうですか。まぁ……あの婦警のことを考えれば、赤井君の気持ちはわからなくもないですよ。でも……私達の言うことを、少しは聞いてくれてもよかったんじゃないですか?」


「……ホントに、ごめん」


 俺がそう言うと、古谷さんが大きくため息をつく様子が聞こえて来た。


「……赤井君は、お人好し過ぎるんです。それに、こんな状況下で、自分のこと以外を守ろうなんて考えるのはどうかしていますよ」


「……ごめん」


「……もっとも、私達も、あの子が言ったことに便乗したのは、悪かったと思いますが……赤井君。1つ約束してほしいんです」


「……約束?」


 俺が顔を上げて古谷さんを見る。古谷さんはジッと、真剣に俺の方を見ていた。


「今後、私達以外のことは信用しちゃいけません。この世界での赤井君の味方は私と紫藤さん、そして、小室さん……それだけなんです。いいですね?」


 古谷さんはそれだけ言うと、立ち上がって、俺の座っている場所から離れていってしまった。

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