優柔不断の代価 1
「……はぁ」
その後、俺は1人でデパートの階段に座り込んでいた。
今更になってだが、自分自身がしたことがなんと愚かなことか、わかってきたのである。
もっとも、後悔先に立たずという言葉の通り、俺自身、自分があまりにも愚かすぎて自己嫌悪に陥っていたが……
「おい」
と、俺がそんな風にしていると、頭の上から声が聞こえて来た。
「なにやってんだよ。そんな所で」
顔を上げると、紫藤さんと古谷さんが二人で俺のことを見ていた。
「あ……いや、なんでもないよ」
「……なんでもないはないでしょう」
そう言って2人は俺の隣に腰を下ろす。
しばらく二人共、口を開かなかった。無論、俺自身も2人には何も話しかけることができなかった。
「あー……赤井さぁ。その……」
先に口を開いたのは紫藤さんだった。
「……何、紫藤さん」
「その……なんというか……すまなかった」
「……なんで、謝るのさ」
「え? いや、だって……俺達はその……」
紫藤さんが困り顔で古谷さんを見る。古谷さんは呆れた様子で俺のことを見ていた。
「赤井君……どうして、私達の言うこと、聞いてくれなかったんですか?」
古谷さんは落ち着いた様子でそう訊ねて来た。
俺はその顔をまっすぐ見ることが出来なかった。
「赤井君」
「……宮本さんを、思い出したんだ」
「……え?」
情けないと思いながらも、俺は素直に本音を古谷さんに言った。
「……俺は、本当に夕樹さんが人間だと思った……それで、みんなの事怖いって言っていたし……だから、宮本さんのことを思い出したんだ……」
「……それで、あの子のことを、今度は守ろう、って思ったんですか?」
古谷さんの問いかけに、俺はゆっくりと頷いた。
「……そうですか。まぁ……あの婦警のことを考えれば、赤井君の気持ちはわからなくもないですよ。でも……私達の言うことを、少しは聞いてくれてもよかったんじゃないですか?」
「……ホントに、ごめん」
俺がそう言うと、古谷さんが大きくため息をつく様子が聞こえて来た。
「……赤井君は、お人好し過ぎるんです。それに、こんな状況下で、自分のこと以外を守ろうなんて考えるのはどうかしていますよ」
「……ごめん」
「……もっとも、私達も、あの子が言ったことに便乗したのは、悪かったと思いますが……赤井君。1つ約束してほしいんです」
「……約束?」
俺が顔を上げて古谷さんを見る。古谷さんはジッと、真剣に俺の方を見ていた。
「今後、私達以外のことは信用しちゃいけません。この世界での赤井君の味方は私と紫藤さん、そして、小室さん……それだけなんです。いいですね?」
古谷さんはそれだけ言うと、立ち上がって、俺の座っている場所から離れていってしまった。




