リカちゃんの囁き 2
「……何言ってんだ? お前」
紫藤さんが呆れ気味にそう言う。
しかし、夕樹さんは特に動じることもなくニタニタと笑っている。
「だって……そうじゃない? アンタ達、私がゾンビだってこと、気付いてたんでしょ?」
「え……そ、それはまぁ…そうだけど……」
紫藤さんはそういって古谷さんの方に顔を向ける。
「ええ。そうです。アナタが最初からゾンビであることは、私達は確信していました」
古谷さんがそうはっきりと言うと、夕樹さんは嬉しそうに笑った。
「な……何がおかしいんですか?」
「だって……アンタ達、私がゾンビだってこと、ドーテー君に言ったんでしょ?」
「え、ええ。言いました」
「でも、ドーテー君はアンタ達の話を信じないで私と会おうとした……これって、変じゃない?」
そういって夕樹さんは舐めるような視線で俺を見てきた。
「え……そ、それは……だって、夕樹さんが……」
「でもさぁ、アンタ、コイツらに私がゾンビだってこと、言われてたんでしょ? それなのに無視するの、おかしくない?」
そう言われてしまうと、反論できなかった。
紫藤さんも古谷さんも、俺に夕樹さんがゾンビであることは十分に注意しれくれた……それなのにそれを無視して夕樹さんに俺は会いに行ったのだ。
結果として古谷さんの提案がなければ、おそらく俺は……
「それは……赤井君がお人好しなだけです。そもそも、だからといって私達を騙そうとしているなんて……どう話が繋がるんですか?」
「……もう、ドーテー君、嫌なんじゃないの?」
と、夕樹さんはボソリと、だが、その場にいる全員に聞こえるように囁いた。
「え……な、何が嫌だって……」
俺が思わず訊ねると、夕樹さんはこちらを見て、怪しげな笑みを浮かべる。
「……こんなゾンビ共と一緒にいたくない、ってことよ」




