彼女はゾンビ? 8
「え……あの子って……夕樹さんのこと?」
「はい……だって、そうとしか考えられないじゃないですか。他に誰がいるんです?」
「そ、それは……このデパートの中にまだゾンビが隠れている可能性だってあるじゃないか。それなのに夕樹さんを疑うのは良くないよ……」
そうだ。夕樹さんは人間だった。
俺が握った時に感じた温かいぬくもり……それじゃあ、あれはどう説明するって言うんだ?
「赤井君……私達のこと、信用してくれないんですか?」
と、古谷さんがいきなりそう言った。
「え……な、何言っているのさ、古谷さん」
「だって、これは直感なんです……あの子は危険です。これ以上関わらない方が……」
古谷さんはそう言って紫藤さんの方を見る。
「……なぁ、赤井。俺はゾンビモドキと意見が合わないことの方が多いが……これだけは賛成だ。どう考えたってアイツは危険だ」
「そ、そんな……紫藤さんまで……」
俺は思わず小室さんを見る。小室さんも心配そうに俺のことを見ていた。
「……わかった。とりあえず、夕樹さんと話をしてくるよ」
「はぁ? お、おい! なんでそうなるんだよ……」
「大丈夫だよ。もし、彼女がゾンビだったら、もっと早くに俺に襲いかかってきたはずだよ? それに、もし小室さんや古谷さん、紫藤さんと『同じ』なら、彼女はゾンビじゃない。人間だ」
俺がそういうと、三人は顔を見合わせ、大きくため息をついた。
「……ったく。たぶん、そんなことを言うんだろうと思ったぜ……ホント、仕方ねぇヤツだ」
紫藤さんが呆れ気味にそう言う。
「そうですね……わかりました。でも、1人で行くのはあまりにも危険です。だから……私に考えがあります」
と、古谷さんは得意げな顔で俺に向かってそう言ったのだった。




