彼女はゾンビ? 4
「……え、えっと……ホントにみんな……ごめんね」
俺は先程から不機嫌そうな――正確には小室さんは相変らずの無表情なのでわからなかったが――紫藤さんと古谷さんを前に頭を下げた。
「……ええ。いいですよ。どうせ、私達はゾンビですから」
「古谷さん……ホント……ごめん」
そう言う古谷さんに対して、俺は頭ることしか出来なかった。
「……ったく。なんなんだ、アイツ。ムカつくぜ……ああいうタイプは本能的にムカつくんだよなぁ」
紫藤さんの方はゾンビ扱いされたことではなく、夕樹さんの態度そのものに怒っているようだった。
小室さんの方を見ると小室さんは相変らず無表情である。しかし、何かを考えこんでいるようにも見えた。
「え、えっと……とりあえず、夕樹さんと二人で話してくるから、みんなはここで待っててね」
「……赤井君。わかっているとは思いますが、まさか、私達を置いてそのままどこかに行ったりしないですよね?」
古谷さんは怒りを込めてそう言った。もちろん、俺だってそう言われることは想定内だった。
「当たり前でしょ。大丈夫。すぐに戻ってくるから」
俺ははっきりとそう言うと、古谷さんも多少は納得してくれたようである。俺だってできればこんなことは言いたくなかったのだが……とにかく夕樹さんと話してくるしかないようである。
俺はそのまま三人の冷たい視線を背中に浴びながら、夕樹さんの方へ戻っていった。
「夕樹さん。ごめん。三人に話してきたよ」
「あ……ご、ごめんなさい……」
「ああ、うん……えっと、やっぱりどうしてもダメなの?」
俺がそう言うと、夕樹さんは小さく頷いた。どうやら、夕樹さんも宮本さんと同様に「ゾンビがダメ」なタイプの人らしい。
「そっか……わかったよ。それで……話って、何?」
「あ……えっと……その……私、頼みたいことがあるんです……」
「頼みたいこと? 何?」
「その……赤井君に、私を……守ってもらいたいんです」
夕樹さんは申し訳無さそうに俺にそう言ってきた。




