彼女はゾンビ? 3
「えっと……夕樹さんはいつからここに?」
「え……5日前くらいからですけど……」
「ああ。じゃあ、俺達がいなくなった後か」
俺達はそのままデパートの三階、家具品売り場の椅子に勝手に座っていた。そこで、先ほどあった女の子、夕樹リカさんに話を聞いていたのである。
「でも……一人でここにいたの?」
「あ……はい。一人で……いました」
「そっか……ゾンビとかは、大丈夫だった?」
「え、ええ……でも、怖かった……です……」
夕樹さんはそういって俯いてしまった。これ以上はあまり話を効かない方がいいみたいである。
「あ……えっと、こんなこと聞くのは悪いんですけど、食料とかはどうしてたんですか?」
古谷さんがなるべく安心させようとしたのか、笑顔で夕樹さんに訊ねた。しかし、夕樹さんは古谷さんの方を見ようとはしなかった。
「え……えっと、夕樹さん。食料は?」
「……一応、持ってきたものがありました……でも、もうないんです……」
俺が訊ねると、涙ながらにそういっていきなり俺の手を掴んできた。
「もう……限界なんです……お願いします……助けてください……!」
「え……あ、ああ。うん。なんとか……ね」
俺はいきなりされたその行為を拒むことが出来なかった。
しかし、俺の手を掴んできたその手は……温かった。
ぬくもりのある手だった。俺はこれで夕樹さんが人間であるということを確信した。
その一方で、三人の女の子たちの視線は冷たいものだった。
「と、とにかく……これからのこと考えないと。えっと、夕樹さん、地下一階の食料売り場は行った?」
俺はなんとかその場を誤魔化すためにそう言った。
「あ……行ってないです。怖くて……」
「そっか。じゃあ、とりあえず、そこに行ってみようか」
「あ、あの!」
そう言って俺が立ち上がると、いきなり夕樹さんは俺の服の袖を掴んできた。
「え……な、何?」
「その……赤井さんと、ちょっと……二人きりで話したいことがあるんです……」
夕樹さんは目をうるませて俺にそう言ったのだった。その潤んだ瞳も、綺麗な茶色だった。




