消沈の夜
結局、そのまま夜になってしまった。
俺と小室さん、紫藤さん、そして、既に起き上がるところまで回復した古谷さんは四人でコンビニの駐車場に、それとなく座っていた。
「……え、えっと。赤井君」
最初に口を開いたのは、古谷さんだった。既に十分傷は癒えたようで、普通に俺に話しかけてくる。
「何? 古谷さん。傷、もう大丈夫なの?」
「あ……はい。もう大丈夫です。ありがとうございます……」
俺のことを心配しているのか、不安そうな顔で古谷さんは俺を見ている。
「あはは……そんな顔しないでよ。大丈夫だよ。もう……」
「そ、そうなんですか? ホントに?」
「ああ、ホント」
俺は無理やり笑顔を作って古谷さんに微笑んだ。どうにも、頭から先ほどの光景が離れなかった。
自らのこめかみに銃口を当てた宮本さん……どうして、あんなことをしたのだろう。宮本さん……
「おい、周り、見てきたぞ」
と、そこへ周囲を見まわってくると言ってコンビニから離れた紫藤さんが戻ってきた。
「ああ、どうだった?」
「いや、ゾンビはいないみたいだ。少なくともこのコンビニ周辺にはいない。ま、コンビニの中でぶっ倒れているデカブツも当分は起きないだろうし、夜中に襲われる心配はないだろうぜ」
「そっか……ありがとう」
俺が御礼を言うと、紫藤さんは少し気まずそうな顔で俺を見た。
「その……悪かったな。俺が勝手にコンビニなんか入って……」
「え? あはは。気にしてないよ。まさかコンビニの中にあんな大きいゾンビがいるなんて思わないじゃないか」
そういうことじゃない、と紫藤さんが言いたそうな顔をしているのはわかった。
でも、俺もなるべくなら宮本さんのことを話題にしたくなかったのである。
「……あれ? そういえば、小室のヤツはどこへ言ったんだ?」
「え? あ……そういえば……」
周囲を見回してみても、確かに小室さんの姿が見えない。にわかに心配になって、俺は立ち上がった。
「……俺、探してくるよ」
「わたし、ここ」
と、思わず悲鳴をあげてしまいそうになるのを我慢しながら、俺は背後を振り返った。
そこには、無表情の小室さんが姿があった。
「あ……もう、小室さん……どこに行ってたの?」
俺がそう聞くと、小室さんは少し目を伏し目がちに俺のことを見る。
「あかいくん、はなしたいこと、ある」
「え……話したいこと?」
俺が思わず紫藤さんのことを見る。
「行ってやれよ。俺達はここで待っているから」
俺は古谷さんの方にも顔を向ける。古谷さんも同様に小さく頷いていた。
「……わかった。小室さん。話って、何?」
「こっち、きて」
小室さんはそういって手招きしてきた。俺はその導きのままに小室さんの後についていった。




