追跡者 4
それから数時間後。既に夕暮れ担った頃。
「……あ、赤井君……」
古谷さんの弱々しい声が聞こえて来た。
「あぁ……古谷さん……」
俺はようやく平常の状態に戻った古谷さんの顔を見る。
「え、えっと……もう、大丈夫みたいです……」
俺は紫藤さんと小室さんと顔を見合わせる。三人共ようやく安心した。
「ほら。言ったじゃないか。大丈夫だ、と」
しかし、そこへ冷淡な声が割って入ってきた。
俺は思わず立ち上がった。
「……宮本さん」
そして、そのまま宮本さんの方に近づいていく。
「なぁ? 言っただろう。赤井君。もうこんな化け物共とは一緒にいない方がいい。お姉さんが護ってあげるから、私と一緒に――」
「うるさい!」
と、同時に俺は宮本さんの頬を叩いてしまった。
女性……しかも、自分より年上の女性を叩くというのはどうかと思ったが、その時は理性よりも感情が先に行動してしまったのである。
パシンという乾いた音が響いてから、暫く経った。俺は宮本さんを叩いたということをしばらくしてから実感した。
「あ……ごめんなさい。宮本さん……」
そして、思わず謝ってしまった。宮本さんは目を丸くして俺を見ている。
「……なぜ、私を叩く?」
「え、あ……すいません。でも……言ったじゃないですか。小室さんも古谷さんも、化け物じゃないんですよ」
俺がそう言うと、宮本さんは、小室さん、古谷さんに視線を写した後、最後に俺のことを見た。
「……そうか。じゃあ、君は、化け物でも受け入れてくれるのか」
「だから……俺は化け物だなんて思いません。こうやって意思疎通をしているんです。化け物だなんて――」
「……嘘だ」
「……え?」
「嘘だ……化け物になったら、赤井君は私を受け入れてくれない……このままジャ……私ハ化けものになってしまう……ワタシ……アカイクン……ニ受け入れてモラエナイナラ……」
「み、宮本さん!?」
すると、宮本さんはそのまま右手に持った拳銃をこめかみに当て、躊躇うこと無く引き金を轢いた。
乾いた音の後で、大量の血がそのまま宮本さんの銃口を当てた反対側から飛び出た。
俺はそのまま立ち上がる。
「……紫藤さん」
「え? ど、どうした?」
あまりのことに呆然としていた紫藤さんに話しかけてから、俺はコンビニの方を向く。
「……トイレ行ってくる」
「あ、ああ……」
口元を抑えながら、俺はそのままコンビニに駆け込んだ。




