再びデパートへ 3
結局、紫藤さんと古谷さんは「デパートに付くまでお互い喋らない」ということを条件として、なんとかそのまま進むことにした。
小室さんは相変らず背後を気にしていたが、俺もなんとなく聞きづらい雰囲気だったのだそのままデパートへの道を進むことにした。
「お! おい! 赤井!」
と、デパートまでの道程を、丁度半分程進みきった辺りでのことであった。
「なんですか……喋らないって約束したのに……」
「見ろよ! コンビニだ!」
古谷さんの愚痴はスルーして嬉しそうにそう言う紫藤さん。
紫藤さんの言葉通り、見ると確かにそこにはコンビニが見えた。
「あ、うん……確かに、コンビニだけど……」
「入ろうぜ! 食い物があるかもしれねぇ!」
「ちょ……ちょっと待ちなさい!」
と、そのままコンビニに直行しようとする紫藤さんを、古谷さんが制止する。
「……なんだよ。ゾンビモドキ」
不満そうな顔で振り返る紫藤さん。古谷さんはイラ付き気味に紫藤さんを見ている。
「あのですね……赤井君ならともかく、アナタ! 食べ物を食べなくても平気な身体ですよね? それなのに、どうしてコンビニなんて行こうとしているんですか?」
「はぁ? あのなぁ……確かに、食べなくても平気だ。だけどよ。食べたいって思うことはあるだろ? お前だってそうじゃないのかよ?」
紫藤さんの言葉に、古谷さんは少し戸惑い気味だった。
「た、確かに……だからといって、いきなりコンビニに入るなんて危険過ぎます!」
「なんでだよ? 俺達はゾンビだぜ? 別に他の奴らに襲われる危険なんてないだろ?」
「で、ですけど……」
困った顔で古谷さんが俺を見る。かといって、俺もどうすることもできないたのだが。
「仕方ねぇな……俺が少し見てきてやるよ。食い物でも残ってたら、お前たちの分もとってきてやるから!」
そう言って、紫藤さんはそのままコンビニの方へ走って行ってしまった。
「はぁ……赤井君、どうしてあんな人、助けたんです?」
「え? あ、あはは……ああ見えて紫藤さんはしっかりしているから大丈夫だよ……たぶん……」
そして、コンビニに紫藤さんが入っていった、その直後のことであった。
「うわぁぁぁ!!!」
「……へ?」
まぎれもなくそれは紫藤さんの叫び声であった。
「あ、赤井君……今の……」
古谷さんに言われるが早いか、俺はバットを持ったままコンビニの中へ入っていった。
「紫藤さん!?」
「あ……赤井……」
そこには涙目で座り込む紫藤さん。その先には……
「……へ?」
身長は180センチ、体重は……100キロはあるだろうか。とにかく、巨体のゾンビが経っていたのだった。




